ソレイユの悲劇

□第二話
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ラインは早朝、ふと目を覚ました。誰かにぽんとたたかれたのかと思った。
隣にはクロエがいて、まだ気持ちよさそうに眠っていた。猫みたいに。
2人の寝室は別々にあって、ラインはユーデュロイとペイズリーと同じ部屋だがクに呼ばれたときだけここで眠っている。
早朝。いつもクロエの起床時間くらいかと思ったが、クロエの起きる気配はない。
同じくらいに目が覚めたらよかったのに。
起きだす気もない。かといってもう一度眠れそうでもなかった。クロエが後から起きたら朝食を一緒に作ろうか。
うすくてあたたかい掛布は先日本城にクリーニングとして出していて、今日のは分厚いものだ。薄いのとはまた違ったあたたかさがあった。
クロエの寝顔は目つきの悪さが弱まり、幼さが表れる。
ラインはそれを微笑ましくみていた。
―――と。
クロエの頬に一筋の水が通った。
涙。
「クロエ…?」
起きていないことを知りつつも声をかける。やはり返事はなかった。
たまに、クロエは寝ているのに泣くのだ。
7年近く一緒にいるのに、ラインはクロエのことをよく知らない。過去。弟のワインの存在だって本人が現れてから知ったのだから。
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