小説3

□疑われた関係 全6話
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「じゃあさ、お前だったらどっち。局長と副長、どっちだったら相手にできる?」
「えええええ、そういうこと聞く!?どっちって、どっちって、どっちとやるか? いや、やられるか?」
「俺、どっちかっつったら副長を押し倒してみたいかも」
「え、押し倒す?俺、副長にひざまずきたい」
「ちょ、な、なんの告白」
「俺は断然局長だな。なんか床の中だとやさしそうじゃん」
「なんでそうなるの、俺は無理!俺は局長も副長も無理、女以外無理!」
「なに言ってんのお前、よっちゃんがいたとき超かわいいってベタ惚れだったじゃねえか」
「よっちゃんはほぼ女だろ!」
ふーん。山崎はジャンプ越しに隊士たちの喧々ごうごうを聞きつつ、新しい発見をおもしろがっていた。
(こいつら彼女がいる奴も多いのに、なに話してんだか。まあ酒が入ってるってのもあるだろうけど、やっぱり人を惹きつける持って生まれたもんがあるんだろうなあ、あの人たちには。ま、実際のところあのふたりがこいつらを相手にするとか来世でもありえないけど。そもそも局長は女好きだし、副長は…男色家じゃないけど局長しか好きじゃない。この世で局長以外に興味ない)
「なあ、そういう話じゃなかっただろ。局長と副長の仲が怪しいって話だったろ。どっちとならやれるかとかじゃなくて、本題に戻ろう本題に」
比較的冷静な男がその場の混乱を収め、隊士たちはわれに返る。そうだったあのふたりの関係な、そう言いながら、談話室はもはや完全に「ふたりはできている」という空気で満たされている。
「でもさ、できてるっつったってさ。屯所内での集団生活なんだから、べたべたできねえじゃん」
「いや、すでに十分べたべたしてんだろ。近藤さん近藤さんって、副長1日に何回局長を呼んでる?局長だってトシトシって、餌を待つ生まれたての雛かっつの」
「俺たちはあの親密さを当たり前のことと捉え過ぎてて、ちょっと感覚が麻痺してたのかもしれないな。客観的に考えれば、確かにあの距離の近さは尋常じゃない。友情以上のものがあると疑われても無理はないと思う。だがこうして俺たちが推測したところで、その推測を裏付ける証拠はなにもない」
「いや、毎日目にしてるあのふたりの態度こそがなによりもの証拠だろ」
「そうじゃなくて、できてる間柄じゃなければしないような現場は、誰も目にしたことがない」
「現場って、つまり、ぬ、濡れ場?」
「お前の単語が卑猥」
「でもさ、不可能じゃないんじゃないの、現場を目にするの。だって局長も副長も屯所に住んでんだから」
「…こっそり見るってこと?」
何度目かの沈黙が談話室に広がる。
(おいおい、まさかお前らのぞき見ようとか思ってる?真選組の隊士がそんな短絡的な発想でいいわけ?)
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