小説3

□俺は今ムラムラしている 全5話
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ムラムラとイライラは表裏一体だということを俺は初めて知った。
隊士たちが始終いらついてる俺の一挙一動に怯えてるのがわかる、腫れものを扱うかのように接してくるのがますますいらつかせる。なによりも近藤さんが、ときに俺を辟易させるほどエロ魔人の近藤さんが、こういうときに限っててんで俺に(というか俺の肉体に)興味がなさそうに見えるのがなんとも耐えがたい。
正直、俺は俺なりに精一杯アピールした。わざと風呂上がりに近藤さんの部屋へ書類を持っていったり(過去のデータの近藤さんはよく「トシいいにおいがする!」と俺を押し倒し、3度のうち2度は俺に突き飛ばされていた)、近藤さんの寝入りばなに書類を持っていったり(「んあ?明日見るから机置いといてー」と寝ぼけた声で言われただけだった)、近藤さんが暇そうな時間を見計らって書類を持っていったりした(昼寝してやがった)。
アピールが足りないんだろうか。やっぱり書類を持っていくという行為だけじゃ近藤さんには伝わりにくいのかもしれない。かといって「やりてえんだけど」とか「やってもいいんだけど」とか「やるのはやぶさかでないんだけど」とか言って、近藤さんから「なにトシ、発情期?」とか言われて笑われたりからかわれたりしたら死ぬ。いや、死ぬほど深刻なことじゃねえけど、なんというか、ムラムラしてるのがあからさまにばれるのが恥ずかしい。
しかしそういうことを言ってる場合じゃねえってほど俺は追い詰められてきた。ムラムラは相変わらず継続中だ。近藤さんのムラムラはどうなってんだ、俺とやりたくねえのか?かれこれ半月、いやそろそろ3週間?健全な関係だぞ?まさか近藤さんEDとか?いやいやそれはない、だってついこの間「なあなあ朝勃ちって何歳まであんの?俺まだあんだけど正常?異常?」と原田に尋ねてたのを確かに聞いた。
「トシ、最近なんかあった?なんか怒ってる?隊士たちが副長の機嫌悪りぃってびくついてんぞ」
近藤さんは能天気にもそんなことを言って来た。原因はあんただよ!俺は空気の読めねえ近藤さんに「別に」とそっぽを向いた。
「なにトシ、俺にもなんか怒ってる?なに?」
顔をのぞき込んでくる。だからムラムラするからそういうのやめろ。
「あ、もしかしてここんとこしばらくやってねえから溜まってる?」
ビンゴ!ビンゴ近藤さん、ナイス!すげえ下品な言い回しだけどその通り!
ところが俺が心中で歓喜しているのと相反し、近藤さんは「ウソウソ!」とすぐに訂正した。
「ごめんな、トシそういうこと言われるの嫌なのにな、冗談だから怒んないでね!なんか最近あんまり顔色よくねえぞ、ゆっくり休んでな?」
そういって俺の髪をくしゃりとなでた。
違う!だからそうじゃなくて!ビンゴだったのに近藤さんのバカ!!
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