雪樹月下

□第壱夜
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歩き始めてどの位経っただろうか。ふいに人の気配がして身構える。

「悠様ぁー、今日ご一緒にランチとりませんか?」

「今度うちの会社のパーティーがあるんです!!是非来てくださいっ」

「クッキー焼いたんですっ。良かったらもらってくださいっ」



……何だ?あれは、男だよな?

1人だけ背が高く中性的な…綺麗な顔をした男を小さい女みたいな奴らが囲ってる。

何か異様な光景だな……まぁ俺に関係ないから早く通り過ぎるか。

「あ、そこの君!!」

あー…引き止められたやつは可哀想だな。

「君だよ、金髪の子!!」

……はぁ。

「………………何か?」

通り過ぎようとしたら呆気なく腕を掴まれてしまった。

逃亡失敗。

「君編入生だよね?」

「はぁ…一応」

頷いてやると男は俺の腕を掴んだまま小さい取り巻き連中に何かを行って歩き出した。

「校舎まで案内するね。僕の名前は宝泉寺悠。副会長なんだ」

男…宝泉寺はにこやかに挨拶してきた。

漆黒の艶のある肩までの髪に紅茶色の瞳。真雪様並みの美人だな。

けど……

「…腕を離してもらってもいいですか」

いつまで掴んでるつもりなんだろうか。結構痛いんだよね…

「あ、ごめんね?で、君の名前は?」

副会長で案内役(自称)なら知ってるんだろうけど…

「柊久遠です。宝泉寺先輩。一ついいですか?」

「何かな?」

宝泉寺は穏やかな笑顔を向けてくる。

「うるさいと思うんだったら誰にも彼にも笑顔を振りまくのは止めたらどうです?」

相手を見ずに言うと隣の足音が途絶えた。

「え…………?」

歩くのをやめて宝泉寺を見ると目を見開いている。

「嘘くさいんですよ、笑顔。勝手に人を使って追い払うくらいならやめたらどうです。
……………………気分が悪い」
俺は固まってる宝泉寺を置いて見え始めた校舎へと向かった。












「賢い子は嫌いだよ……柊久遠」


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