雪樹月下

□第壱夜
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……というわけで、今俺は堅く閉ざされた門の前にいる。

あの後真雪様を問いただすと、「編入届はもう出してありますよ。理事長が学生時代の悪友なんです。久遠の話をしたら是非自分の学園に来てほしいと言いまして。丁度日本では進級の時期ですし、折角だから行ってみなさい」



…とのことだ。引き継ぎで忙殺され忘れていたらしいが、絶対拒否できないようギリギリまで延ばしたんだ。真雪様はそう言う方だ。そんなことしなくても、俺は真雪様の決定には逆らわないのに。

俺は真雪様に逆らわない。というか逆らえない。その理由はやっぱり俺たちの関係にあるわけで。

12歳のときに真雪様に拾われた俺はどうしても頭が上がらないのだ。

基本的に真雪様の決定は正しいことが多いからいいんだけど……今回ばかりは一瞬だけ拒否しようかと考えてしまった。

にしても……

「どうやって入るんだろう」

今日から編入する学校は都心から離れた山奥にあり、乗ってきた車はついさっき帰してしまった。

著名人の子息が多くいると聞いたが、これだけ物々しい門と塀なら侵入者もいないだろう。

「……インターホン?」

門右側の塀にインターホンらしきものを見つけてとりあえず押してみた。



《ガガ…はい。どちらさまでしょう?》

「今日から編入する柊久遠ですが…」

《柊様ですね。ガ…確認がとれましたので只今門をお開けします。ガガ》

金属が擦れる音がして視線を上げると鉄門が内側に開いていった。

「ハイテクだな…」

門をくぐって暫くあるくと木々の間から水の音が聞こえてきた。
山の中に森をつくっているらしい……。

「愚かな…」

自然を開拓し、壊して尚も自然を求め作り出す。人間というイキモノは何て浅ましい存在か。

まぁないよりはマシだけど。
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