短編

□この瞬間
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朝、何気なく目が覚めて身を起こす。
押入れから出て広間を見渡すが誰もいない。
新八はまだ来ていないかもしれないが、銀時はいる筈。
まだ寝ているのかと思い銀時がいつも寝ている部屋の襖を開ける。
しかし、そこにも誰もいなかった。

「おかしいアルな…、何で今日は誰もいないアルか」

そういえば、定春までいない。
今日は仕事があるなど聞いてないし、他に何か予定でもあっただろうか、とソファーに座って考える。
だが、考えても出ないものは出なくて、神楽は結局考える事を止めた。

「暇、アル…」

そう呟いた時、玄関の扉が開く音が耳に入った。
誰か帰って来たのだと思い、神楽は玄関へ走って向かった。

「!な、何でお前がいるアルか!?」

「何でィ、いちゃ悪ィのか?」

期待した人物はいなかったが代わりに沖田がいた。
神楽はそこに沖田がいた事に驚き、足を止める。

「今日誕生日なんだろ?」

「たん、じょう…び?」

神楽は言われて始めて今日が自分の誕生日だと思い出す。
しかし、同時に何故沖田が知ってるのか疑問に思いそれを問えば、どうやらここに来る途中で銀時に会ったらしい。
その時に聞いたんだとか。

「私の誕生日とお前がここにいる事の何が関係あるネ!」

「だから…祝ってやるって言ってるんでィ」

沖田の言葉に神楽は目を瞠った。
そして、神楽は沖田に背を向け、廊下を歩いていく。
居間まで行くと、振り返って微笑んだ。

「しょうがないから、祝わせてやるアル」

神楽らしい物言いに、沖田も微笑むと靴を脱ぎ中に入っていく。

この手に持ったケーキを出せば、彼女はどんな表情をするだろうか。
驚くだろうか、それとも照れたように笑うんだろうか。

きっとこの瞬間を待ち侘びていたんだ。
彼女と二人きりのこの空間で迎える、この時を…。




Fin.

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