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□相互記念小説
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『星座占い』




大ファンである結野アナのブラック星座占い。今日のてんびん座は最下位だった。
「んなこといちいち気にしてられっかよ」
と開き直ったつもりだったが、残念な事にこの日に限ってその占いはよく当たっている気がした――。
朝から気にくわねェ占いの結果にケチをつけるとオレはソファーに寝転がった。いわゆる不貞寝ってやつだな。
神楽のやつは定春を連れて遊びに行っちまったし、新八も大江戸スーパーの特売日だとかでいそいそと出かけてったから、万事屋に残ったのは必然的にオレ一人。どれくらいそうしていたんだろうか?気付けばうとうとと浅い眠りについていた思考が玄関のインターホンの音で再び現実に引き戻される。
「ったく誰だよ?」
今日は楽しみにしていた占いの結果が悪かったせいもありイマイチ気分が乗らない。神楽も新八もいない事だし、万事屋への依頼ならこのまま居留守を使って断っちまうか。そう決め込んで再び目を閉じたオレの耳に恐怖の声が届いた。
「坂田銀時様、家賃の徴収に参りました。私が歌い終わるまでに出てきて頂かなければ強行突破させて…」
「まーて待て待て待て!!!」
瞬間移動並みの速さで玄関まで走り込んで引き戸を開ければ、階下のスナックお登勢の従業員である少女…いや、少女型のロボット、『たま』が無表情に突っ立っている姿があった。
「いやァそのさ、今手持ちがなくてよォ…」
出直してくれないかという言葉をオレが口にする前にたまの武器であるモップ型のバズーカー砲が火を吹いていた。
先日壊されてやっと直したばかりの玄関がまたみごとに吹っ飛ばされる。
「お登勢様から、何と言い訳されようと回収してくるよう命じられております」
ロボットに言い訳したって無理か。ちっと舌打ちをすると2射目の攻撃に備え構えるたまの横をすり抜けオレは階段を駆け下りた。
「コォラァ、銀時ィ!!!」
仁王立ちになって待ち構えるババァことお登勢の姿がオレの目に飛び込んでくる。が、これもすっかり慣れたもんだ。オレの首根っこを掴もうと身構えたババァの手をも寸での所でうまく交わして、オレは一目散に駆け出す。
「金が出来たらすぐ払うって!」
金が入る予定などあるはずもないのだが、何も言わずに逃げるよりは逃げ切れる確立が上がる。
たまが階段を駆け下りてくる前に、オレは二人の視界から何とか逃げ切る事に成功した。
「さァて、どうしたもんかねェ…」
軽い財布を開いてみても一ヶ月分の家賃すら入ってない。
「何にしろ、まずは元手を増やさねーとな…」
オレの足はまっすぐにパチンコ屋へと向かった。





今日の占いは嫌味な位によく当たる。―占いの結果を伝える―いつもは輝きに満ちて見える結野アナの笑顔が今日は少しだけ腹立たしく脳裏に蘇る。
「ここまでボロ負けするとはなァ…」
財布の中身を増やすどころか逆に軽くしちまった。
やっぱりこういう日は家でダラダラ過ごすに限るな。
さすがにもうアイツらも諦めただろうし、買い物から帰ってきた新八がうまくごまかしてくれたかもしんねーなァ。
そんな淡いに期待を胸に抱きながら俺は万時屋へと脚を早める。
と、通りすがり何気なく目をやった公園でオレの視線がピタリと止まる。
ちィとばかし普通のよりデカイ真っ白な犬を横に従え、これでもかと大きくブランコを揺らす赤いチャイナ服の少女。
「神楽!」
頭で意識するよりも先に声が出ていた。まるでそうする事が当たり前のようにごくごく自然に。
そしてオレの声にぱっとこちらを振り返る赤いチャイナ服の娘。
「あ、銀ちゃん」
「こら、危ね…」
オレが止めるよりも先に神楽は勢いのついたブランコから飛び降りるとみごとに着地を決め、そのままオレの胸に飛び込んでくる。神楽の運動神経をもってすれば初めからオレの心配など無用ということだ。半ば頭突きに近い神楽の飛びつきのせいで、その頭が鳩尾に決まり軽い吐き気を催しつつもオレは何とかそれに堪える。
危ねぇのはこいつじゃなくて俺の身だワ!心中で軽くツッコミを入れて今しがた胸に飛び込んできた少女を見下ろすと人懐っこい大きな青い瞳がキラキラと輝いてオレを見上げていた。








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