主従パロ

□センカ×一欠
1ページ/1ページ

「お前、今日一日、猫になれ」
「……は?」

センカは椅子にふんぞりかえってこちらを見て宣った。その突然の命に、一欠は思わず間の抜けた声をあげて固まった。発言者本人は至って真剣――否、にやにやと口元を歪ませた笑みを浮かべて、一欠の反応を見ている。

「……俺は人だ。一応」

たっぷり考えて、導いた答え。
その答えに、センカは腹を抱えて笑った。
まさか、物理的な、根源の生物的な思考にまで陥っていたとは。更に、それが自信がなさげなのがまた可笑しい。以前は人並み以下の生活を送っていたという一欠。だから彼なりの主張を訴えたのであろうが。

「お前、最っ高!最高に、馬鹿!」
「なっ……!」

罵倒に流石にムッとした一欠がセンカを睨むが、センカは涙さえ浮かべて笑い転げている。
ヒイヒイ言いながらやっと我に返ったセンカは、こいこいと一欠を手招きして呼ぶ。
センカの傍に寄る。促されるまま、椅子に腰かける彼の膝に頭を乗せ、膝をつく体制をとらされた。何をするのかと少し身構えていると、ふわりとその頭を撫でられる。

「……?」
「ああ、お前、やっぱりきちんと洗わないと駄目だな」

今はすっかりさらさらと指から零れる髪。この城に来るまでは貧民街に居た一欠は、当然ながら風呂どころか身なりも十分に整えることすらできる日々ではなかった。それが今では身体からよい香りを漂わせ、糊のきいた洗濯したばかりの衣服を身に纏い。
センカに頭をかき混ぜられながら、一欠は少しだけ目を閉じる。

「……猫とは、こういうことか。つまりお前の玩具になれと」
「正確に言うと、猫と玩具は違うよ。元々お前は俺の玩具なんだから」

頭の上にあった手が、頬に落ちてくる。冷たい指先が耳の裏に触れ、一欠はピクリと身を震わす。

「どうせなら、首輪もつけるか?」
「……」
「ああでもそれじゃあ、犬になっちゃうかな」

クスクス、楽しげにセンカは笑った。
さらさらと肌を滑る感触にまた目を細め、一欠はセンカの言葉を流していた。少しずつ、まどろみに支配されていく。

「本当に猫みたいだな」

コトリと頭を預けたセンカから、何故だか日溜まりのにおいがした気がした。


end.
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ