主従パロ
□センカと詩音
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「――綺麗なうただね」
不意に声をかけられて、はっとした。いつの間にか隣にセンカ居て、そして自分との距離が思いの外近くて、驚き身を退く。
そんな詩音に、「ごめん、驚かせたかな」とセンカは苦笑して腰を下ろした。そんなセンカを感情の無い目でじっと見ていた詩音は、センカと視線がかち合って、そっと目を伏せた。萌木のように優しい翠が瞼に隠れる。
「さっき歌ってたの、何て言う歌? いい歌だね」
「……知らない。……むかし、ずっとむかしに聞いたうた」
それはまだ詩音が緑萌ゆる彼の国にいた頃の――優しい、切ない記憶。
どこか遠くを見るような目をする詩音に、センカは少し眉を下げる。声にせずに呟くのは、謝罪の言葉。
(――ごめんね。俺のワガママに付き合わせて。けれどきっと、きっといつか君の手に故郷を――)
言えない代わりに、センカはそっと詩音の頭を撫ぜた。詩音は、黙って身を委ねていた。
「ちいさいころの、子守唄……。なんどもなんども、聞いたうた」
「子守唄、か」
詩音の頭を抱えて、センカは目を閉じた。
「……眠るの?」
「うん……。もう一度、聞かせてよ。君の歌」
芝生に身を横たえて、センカは乞う。やがて聞こえてくるのは、穏やかなうたごえ。
センカの思考を、心を、静かに沈めてゆく。
(それはまるで、鎮魂歌)
(――聞こえる? 貴方への子守唄<レクイエム>)
思い浮かべるのは、あおの瞳。
end.
☆―――
最後の「あおの瞳」って、詩音・センカ双方の想い人。
詩音→風璃、センカ→瑠璃、の彼の人の瞳の色。
ちなみにレクイエムって言ってるのは、瑠璃はもちろん死んでるし、詩音は風璃が死んでると思ってるから。