主人公と一緒シリーズ
□蓮華と
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『蓮華と膝枕』
「ひかっ、ひかーっ」
「……何度も呼ばなくても聞こえている」
「返事くらいくれたっていーじゃん」
言って、ぽすっと収まった彼女の頭は、何故か一欠の足の上。その重みに顔を顰めて彼女を見下ろすと、蓮華は不思議そうにその赤みがかった瞳を瞬かせた。
「なに?」
「何故乗る」
「別に、良いでしょ?減るもんじゃないし」
口の達者な彼女には敵うことなく(もとより一欠は誰に対しても喋ることを苦手としていたが)、一欠は閉口せざるを得ない。大人しく口をつぐんだ一欠に、満足そうに蓮華は笑った。
「ただの、好奇心だから」
「……好奇心?」
「そ」
この行動に、何の意味があると言うのだろうか。一欠が首を傾げていると、蓮華は太陽の眩しさに目を瞑って、言った。
「あの子が気にしてる子が、どんな子なのかなーって」
「……子って…」
目を閉じていた蓮華には見えなかっただろうが、一欠は複雑そうな表情を浮かべていた。けれど蓮華はその気配を察してか、くすくすと笑う。
「……うん、やっぱり、思った通り」
「何がだ」
「こっちの話よ」
そんな彼女の言い回しが、まるで「彼」のようで、一欠は面白くないと言う風に視線を逸らした。
吹き抜けた風が、一欠と蓮華の金の髪を優しく撫ぜていった。
end.