主従パロ
□センカ×一欠
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流れるような所作で練習用の槍を扱ったセンカは、やっと一息吐いて額を拭った。とは言え、流れるほども汗はかいていない。
「水」
「………」
促されて、一欠は無言で差し出した。文句も言わずにセンカは飲み干して、空になった容器で涼を取るように頬に押し当てた。そんな彼を見ながら、一欠は浮かんでいた疑問を口にする。
「…何故、お前はそこまで武術訓練をするんだ」
王子なのだから、大人しく従者たちに守られていれば良いものを。そんな一欠の言葉に、センカは瞬き。
いつもの自信に溢れた笑みを返されるかと思った。或いは無視されるかと思った。しかし、センカはどちらもしなかった。そして一瞬、遠い目をした。
「――それじゃ、駄目だ」
その声音が真剣で、思わず一欠は見惚れた。センカの、深い色をした瞳に、細めた目に。
けれどセンカが不意に口元を歪めたので、一欠も我に返る。センカはそのまま遠くを見たまま、口を開いた。
「俺には、夢があるからね」
夢、という言葉はセンカには余りにも不似合いだ。一欠がそう思うまでに、いつの間にか此方を振り向いていたセンカが口の端を上げた。いつものように。
「その為には、自分の身は自分で守らなきゃ」
そして空の容器を一欠に押し付け、訓練場を後にする。その背を見ながら、一欠が巡らす思いは無い。
だって自分の運命は、結局彼の仰せの通りだから。
――そう考え、随分毒されていると嫌になった。
end.