主人公と一緒シリーズ

□風璃と
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『風璃とお茶する』


彼女が欠伸を噛み殺したのを認めて、風璃はお茶を入れたティーカップを机に置きながら問うた。

「眠いの?」
「――ううん」

返って来たのははっきりとした声音。
けれどまた、のんびりとした雰囲気。

「いっそ寝たら?横になるだけでも」
「本格的に眠いわけじゃないのよ」

風璃が運んできた紅茶を一口。
風璃もその様を見ながら、一口。

「不思議なのよね」
「え?」
「アンタと居ると…何か、気が抜けちゃう」

うんと伸びをして呟かれた言葉に。風璃は瞬き。

「…どーいう意味?」
「どーもこーも。そのまんまの意味」

首を傾げる風璃に、やっぱり無意識だったのねと蓮華は苦笑。

「アンタって、やっぱ凄いわ」
「え?…え?」

終始言葉の意味が分からず疑問符を浮かべる風璃を他所に、蓮華は紅茶をもう一口。
そして、答えを教えてやる。悪戯っ子のような笑みを口の端に浮かべて。

「アンタと居ると、極限まで気が抜けちゃうってこと」
「…どういう意味?」

あーもう本当に鈍いわね。蓮華はそれ以上の説明が面倒で、曖昧に濁した。

「アンタはそのまんまで良いってこと」
「……だ、だから、」

紅茶を飲み干して、蓮華は目を瞑った。このまま眠れそうだ。
遠くで風璃が「寝るならせめてソファかベッドで!」と叫んでいるのが聞こえた気がしたが、無視無視。


(――無条件に心から安心するひと)


end.

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