主人公と一緒シリーズ

□風璃と
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『風璃と膝枕』


正直、一欠は困っていた。たとえ顔に感情が表れていなくても、大変困っていた。そしてどうすれば良いか分からず、戸惑っていた。戸惑っていたこと、一時間。そう、一時間も経っていた。

密着した人肌の体温。安らかな寝息。一欠の真下にある、ソレ。
一欠は内心冷や汗をかいてそソレを見下ろした。緩く閉じられた瞼、安心しきったような寝顔……一欠の膝に頭を乗せた、風璃の姿。

「………」

すっかり夢の世界へ旅立ってしまった風璃に、一欠はどう対処して良いか分からずに硬直する。せめてなるべく接触する部分が少ないように体を退いたが、風璃の頭が落ちそうで止めた。
何故こんな状況になったのかは一欠も分からない。自分が寝ているところに勝手に彼がやってきて、一人で喋っていた筈だった。しかし何時の間にか聴こえていたのは寝息で、僅かな重みも感じた。一欠が気が付いた時には、風璃は寝入ってしまっていたのだった。

せめてこの光景を他の誰にも見られないように、早く風璃が目覚めてくれるように願い、一欠は気まずい空間のなかで、一人大きく息を吐いた。


end.

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