主人公と一緒シリーズ
□番外編
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『手を繋ぐ番外編』
―――ホラ、こっちだよ。
そう手を引かれて、先を行くあのひとを、転ばないように必死で追い掛ける。
待って、と言えば止まってくれるけれど、繋がれた手はそのままに。
そうして二人でゆけば、自分の知らないところ、知らない空気が辺りを包み込んでくる。それは自分が無垢であることの恐怖。
けれど、唯一の密着点から伝わる温もりがそんな恐怖を浄化していく。やさしい体温が、私を安心させる。
幼いころの微かな記憶に覚えているのは、繋がったふたつの手。ひとつは自分の小さな手。もうひとつは、私が小さかったからか随分と大きく感じた優しい手。その、繋がれて手しか覚えていないけれど。
私は、温もりを知っている。
end.