主人公と一緒シリーズ
□センカと
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『センカと雨宿り』
家を出た頃は、雲ひとつない快晴だったのに。
「………」
見上げる空は真暗、大粒の雨が後から後から降ってきて、ばたばたと道に溜まり始めた水を叩いている。
センカは空を仰いで、溜息を吐いた。隣に並んだ風璃が、所々色の変わるまでに水を吸った頭巾を絞っている。
「…どうしよっか」
雨の勢いは衰えずに、止む気配など全くない。センカは疲れたように風璃に問うた。
風璃はパチパチと瞬いて、雨の降る景色を見る。
「…うーん、どうしよっか」
彼の声音は全く困った様子も無く、センカは逆に此方が不安になりそうだと思った。
「走って帰る?」
「濡れるから嫌」
風璃の提案に一言で返して、「じゃあどうするのさ」と首を傾げた彼に、センカはその場に座り込んで言った。
「野宿」
「えー」
「この洞窟なら雨は入ってこないでしょ。それに、濡れて帰って風邪ひく方が嫌だし」
眉を下げた風璃が、少し考えるそぶりを見せる。
「詩音が心配してるだろうなぁ」
「ないない」
「センカは、コロナたちのことが心配じゃないの?」
「別に」
センカの答えに、驚いたように風璃は瞠目した。
そんなに意外な答えだったかとセンカは瞬く。
「センカって、結構冷たい…ううん、その辺、信頼してるんだ」
「さぁ、ね」
冷たいと言われればそうなのだろう。信頼というのとは少し違う気がする。
それでもほんの少しも気にも留めていなかった同居人達のことを、センカは自分でもどう思っているのかは分からなかった。
end.