雨+雪=ミゾレ -雨混じり-
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つめたい、感触。
ジャラリと金属音。
つめたい。
否、もう何の感覚もない。
いたいのか、くるしいのか、それさえも。
「……行きなよ」
ふっと、重みが消えたような気がした。それは気のせいではなかった。
ジャラと鳴ったが、繋がれている感じはしなかった。
「…なぜ、だ」
もう随分と聞いていない己の声は、掠れていた。
咳払いをしようにも喉が渇いて仕方がない。僅かな唾液で喉を湿らす。
相手の顔は、逆光で見えなかった。
それ以前に、この暗闇の世界に突然飛び込んだ白い光に、まだ目が慣れていない。
「行きな」
ほら、と。言葉が背を押す。
振り向いてはいけない気がした。彼の顔を見てはいけない気がした。
だから、走った。裸足で、石畳を駆けた。
そこを出てから、足は止めずに振り向く。彼の姿などとうに見えない。
「………っ…」
嫌じゃ、無かったんだ。
鎖で繋がれたあの冷たい部屋はさみしかったけれど。
かけられる声と与えられる温もりは、嫌じゃなかったんだ。
「………っ!」
もう会うことはないだろう。
永遠に、さよなら。
end?