雨+雪=ミゾレ -雨混じり-

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「ねぇ一欠、髪切ったげよっか」
「……は?」

振り向いて見た彼の顔には、にっこり満面の笑み。いつの間にか右手で鋏を鳴らして、空いた手にはその他の散髪道具がフル装備。
あからさまに不審げな顔をすれば、彼は笑みを浮かべたまま肩を掴んで、強引に背を向けさせた。

「だってさぁ、そろそろ伸びて来てるでしょ?」
「……まぁ、…。…だがお前にされる必要は無い」
「風璃より良いでしょ」
「……誰もして要らん」
「まぁまぁ」

そのままなし崩し的にタオルを掛けられ、長い布を掛けられ。それでも尚不機嫌を浮かべていると、彼は耳元でワザと鋏を鳴らして。

「耳、切っちゃうよ?」
「……そこまでして、切りたいか」
「うん」

ここは、何故と問うべきだろうか。けれどこれ以上このくだらない会話を続けるのも億劫だ。諦めたように息を吐いて、好きにしろと言えば、彼は凄く嬉しそうに返事をした。
そんな彼の様子には此方も毒気を抜かれてしまう。緩みそうな口元を引き締めて待っていれば――。

「さーて、どんな風にしてあげよっかなぁ。モヒカン?落ち武者?」
「……おい」

――彼の声が冗談では無かったので、思わず声を上げた。


end,
 

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