雨+雪=ミゾレ -雨混じり-

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ガラスの棺に閉じ込めておけたら良いのに。
ずっとそう思ってた。それが一番の願いだった。


「馬鹿だな」
「うん、君ならそう言うと思ったよ」

にっこり、微笑んで言われてしまう。
本気だったのだろうか。それはどれが。
真偽が分からずに、一欠は閉口するしかない。

「でも君は、そう思わない?」
「思わない」
「なんでさ。自分のものにしてしまいたいって、思わない?」
「思わない」
「他の誰にも触れさせたくないって、思わない?」
「思わない」

口を噤んで、「つまんない」。
そんなセンカに、一欠は呆れたような視線を遣る。

「……エスカデの言ってたことが分かるな」
「へ?何それ」

あれば千切れそうなほど振っていただろう、その尻尾。
ぼんやりと頬杖ついて思考に陥る一欠を揺さぶって、センカは強請る。
そんなセンカを余所に、浮かぶのはあのエスカデの言葉。




「センカって、犬みたいだと思わないか」
「……何だ唐突に」
「いや、ずっと思ってたんだが。あーでも猫っぽいとこもあるか…?」
「知らん」
「まぁ、とにかく。…アイツは、雨が降っても雪が降っても、外で駆け回りそうなんだよな」
「………」
「首輪付けといても、鎖付けといても、自分で引き千切って行っちまうんだろうな」

そう語るエスカデの目が何かあたたかいものを宿していて。
それに、違和感を感じて。

「……おい」
「ん?」

思わず、一欠は。
自分はセンカの何でも無いと無駄な主張をしながら。

「お前は未だ、………」




「……それが出来たら、良いんだろうな」
「へ、何?」

今日もなんて良い天気なのだろう。

「…いや、」

手を伸ばせば彼が居る。
その柔らかな肌が優しい。

「ねぇそれより、エスカデったら何言ったのさ!」
「……さぁな」

明日も良い天気だったら、いいのに。


end.

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