雨+雪=ミゾレ -雨混じり-
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「飴、いる?」
差し出された、棒付きキャンディ。
真っ赤なイチゴ色の、赤いキャンディ。
目の前に突き出されたそれを、じっと見つめる。
こちらへそれを向ける彼もまた、笑みに歪んだ口に棒を銜え。
「………」
「甘くないよ?多分」
「……要らん」
イチゴが甘くないわけない。酸っぱいイチゴも御免こうむりたい。
たちまち興味を無くし、そっぽ向く彼に、センカは苦笑する。
「動物みたい」
「何がだ」
「匂いで判断しそう。食べれるか食べれないかとか」
自分で言って自分で笑って、センカはキャンディを突き出したまま仰向けに寝返った。
そしてそのまま、天を仰ぐ一欠の腹に圧し掛かって、再び問うのだ。
「飴、いる?」
いつの間にか、その手のイチゴのキャンディは無くなっていた。
「……要らん」
センカが何か言う度、その口の棒が揺れる。
その様を、一欠は面白そうに眺める。
「俺の。檸檬だけど」
すっぱいの、大丈夫だよね?
銜えられた、棒付きキャンディ。
あざやかなレモン色の、黄色いキャンディ。
「………要らん!!」
一欠は全力で拒否した。
end.