雨+雪=ミゾレ -雨混じり-

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恋してるの?愛してるの?



分からない、と彼は言った。
この気持ちの名が何なのかなど、分からないと。

哀しそうに、そう言った。



「一欠」

両手を広げ、導くセンカには応えず、地面に寝転んだ。
軽く唇を尖らせ、センカもまた隣に同じように身を横たえる。

「…お前は、好きだな」
「え、何が?」
「そういうの」

すぐに温もりを求めたがる。

「一欠は、嫌いだっけ」
「別にそういうわけじゃない」
「良かった」

何が、と聴く前に、重いものが被さって来た。
丁度、腹の辺りに。

「重い。退け」
「やだー」
「邪魔だ」
「だってあったかいんだもん」

一欠の体、あったかいんだ。
そう言うセンカに、一欠は思わず口を噤む。
そんな事、言われたことは無かった。

「……あったかい、か」
「うん。太陽の匂い。あ、これって、いつも昼寝してる所為?」

ラルクには死人の様だと言われた。エスカデには氷の様だと比喩された。
そんな、自分が。

「あったかい、か」
「ん?」
「……いや」

何でも無い、と。
一欠が少し嬉しそうに口元を綻ばせていたのを、センカは知らない。

「一欠ー」
「何だ」
「好きだよ」
「………」

ぴくんと腹筋が動いたのに、センカは小さく笑った。

「俺は君に恋してる。俺は君を愛してる」

君はどう?


爽やかな皐月の風が彼の髪を揺らし。
穏やかな春の日差しが二人を包んでいて。


「…分から、ない」

分からない。この気持ちが何なのかなんて。

「でも、」

でも。でも、ね。


春の陽気に誘われたから、言ってみようか。
少し笑うくらい、きっと良いだろう。

「……あったかい、んだ」


この胸が、心地好くあったかくて。
きっと恋してる。きっと愛してる。

好き、なんだ。


end.

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