黒バスA
□降水確率、??%
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ボクの手には晴天に似つかわしくない紺色の傘。珍しく朝の確認を怠った自分を恥じる。
今朝に限ってキミが唇をせがんだせいだなんて、とても言えない。
「久しぶりに待ち合わせてデートしよう」
一緒に住むようになって一年。待ち合わせて何処かに行くなんてほとんど無くなった。
「昔みたいに約束のキスからしよう」なんて言われれば、舞い上がるのも無理はない。
道行く人をかわし、小走りで赤司くんの元へ向かう。どうせこんなボクをキミは笑うんでしょう?
ボクを見つけた赤司くんは「あれ?」と声をあげる。視線の先には傘。ああ、なんとも気まずい。
「きょう雨だった?」
「きのうの予報だと雨だったんですよ。だからてっきり」
尻すぼみになる声。ボクの間抜けに呆れる赤司くんを想像してますます憂鬱になる。
「降るといいな」
「へ?」
惚けたボクの鼻を赤司くんはぎゅっと摘まむ。
「せっかく黒子が相合傘デートの準備をしてきてくれたんだからね」
囁やかれて顔に熱が集まる。
なにか言い返そうか迷って今回はやめた。楽しみにしていなかったと言えば嘘になる。
「外れてもたいしたことないのが天気予報の良いところだよ。逆に絶対見誤ったらいけないのは黒子テツヤのご機嫌だけどな」
空を見上げながら肩を並べて歩き出す。
天候にかかわらず、きょうのデートは幸せ100パーセントになるだろう。