黒バス

□甘く深く相愛
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 くるくる、くるくる。螺旋のように堕ちて行く。くるくる、くるくる。底が見えない其処へまっ逆さまに、緩やかに。
 そして鎖が巻き付いて。そうして沈んで行く。
 例えるならばそれが一番適切なように思えた。


「ボクの事すきですか?」
「すきだよ」
「どれくらい?」
「測り知れないな」

 呼び合って、繋がって、体温を共有するようになって。心を伴うようになって。次第に引き裂かれないようにと、互いを繋ぐ目には見えない拘束の鎖が生まれた。

「オレがすきか?」
「すきですよ」
「どれくらい?」
「わけが分からなくなるくらいです」

 それは必然的になるべくしてなったと、笑う。互いに微笑み合う。
 今となってはきっかけさえも思い出せない瑣末な事だ。この螺旋のような堂々巡りの関係性が酷く曖昧でいて、束縛される魅力があった。互いが互いを求めて、縛りつけようとする。それは何て心静まる甘美な独占欲だろう。
 じん、と痺れるように広がるその甘さが、身体中を巡る。それこそ、螺旋のように。そうして陶酔して溺れて行くのだ。

 束縛される事が。独占欲が。互いを過ぎたる程に愛する現状が。心地良い。絡み合う鎖は熱い。しかし、決して熔けない。そんな鎖が二人の心と心を繋いで離さない。


「赤司くん、今の人、誰ですか?」
「クラスメイトだよ」
「本当ですか?」
「黒子こそ、今の男は誰だ?」
「クラスメイトですよ」
「本当?」

 猜疑心も、嫉妬から来るのだとしたら。それすらもこの上なく愛しく感じて心を満たす。

「赤司くん」
「なに?」
「もしボクが他の人の所に行ってしまったら、どうしますか?」

 魂を捧げようとさえ思っている事は、世界で一番大切な、この空色の少年。黒子テツヤは知らないだろう。

「……どうしてほしい?」
「なにをしてでも、ボクを奪いに来てほしいです」

 そう、なんでも出来る。どんな事も成し遂げる。黒子を自分だけのモノにして。一生オレの下に繋いでおけるのならば。
 小さな罪も大きな嘘も。大罪も狂言も。手段さえも厭わない。この螺旋を保てるのならば。溺れてしまう程に依存する其処へ止まれるのならば。


「じゃあ……殺してしまおうか」

 繋がったまま。くるくる、くるくる。螺旋のように巡るこの恋情を。


「どっちを、殺すんですか?」
「……どっちだろうね」

 彼は、黒子テツヤは、決して軽んじてはいけない。






end

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