黒バス
□緩やかに愛染
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R18
「ん、ふっぁ……」
口の角度を変えるたびに唾液がこぼれる。それさえももったいなく思うのは、変なことで。それでも舌の侵入はまだまだ続くから、くらくら揺れる頭と視界。余計なことを考える暇などなくなっていく。
「んぁ……赤司、くん」
「ん?」
「あの、」
「なに?」
「すき、です」
どうしようもなく愛しくて、今度はボクからキスをした。ゆっくり服を脱がされる。つい、と赤司くんの細い指がなぞるのは、きのう付けられた、鎖骨の鬱血。きのうも身体を重ねたくせにさらに重ねるのだから、相当貪欲なのかもしれない。しかし、それでもいいと思う。
それ位、その位。彼のことを欲しているのだから。
赤司くんはきのうと同じところに唇を寄せ、肌を吸う。きのうよりも幾分朱くなる。はだけた肌の胸の突起を弄られ、ぴくりと反応してしまう。
瞬時に朱くなった顔に、やさしくキスを落とされて。
身体が吹き飛びそうな位の幸福に、ボクは思わず赤司くんの服を掴んだ。
何かにしがみついていないと流されてしまいそうな。飲み込まれてしまう理性に少し怯えてしまう。
「赤司、くん」
「黒子、上、乗って」
促されて、赤司くんの膝に乗る。腰を撫でられて、身体がぞくりと粟立った。
「あの、赤司くん、あの」
「なに」
「……あの、ボクは」
「焦れったい」
再び唇を塞がれる。深く、深く。このままふたり、息ができなくなってしまえばいい。
わがままで、欲張りで、身の程知らずかもしれない。それでも赤司くんに、ボクのことしか考えられなくなって欲しい。
「っは……」
「黒子」
「……?」
いつの間にか太腿に手を這わされていたことに気がつかず、びくりと反応する。ゆっくりゆっくりと身体の中心に手が上っていく度に、背筋に緩い電流がはしる。期待と不安。
「ここ、すきだよな」
「っ……! やっ、」
小さく拒絶の言葉を漏らす。どんどん赤司くんのペースに流されている。怖い。怖い。
そう思うたびに、手を白くなるほど強く握りしめた。自分が自分でなくなりそうな。まるで別の何かに変わってしまうような。
下着をずらされ、直に触れられる。生々しさに目を見開いて、身体が飛び跳ねた。
「やっ! だめ、あっ……」
目を瞑り、顔をうつむけた。ぽろりと涙が零れ落ちる。
生理的なのか、気持ちのものなのか。自分でも分からないまま。
「やぁ! だめですっ……! あかし、くん、だめ、やだっ」
「やだじゃ、ないよ」
ゆっくりと上下する手、湿っていないせいか滑りが幾分悪い。しかし、しばらくすると先走りがゆっくりと垂れていき、徐々に滑りが良くなる。性器がゆっくり反応する。
「黒子、気持ちいいんだよね? ここ、反応してる」
「な、や、いわな、で、くださっ……!」
快感を堪え、きっと、真っ赤だ。それでも首を振る。しっかり性器は反応しているのに、ボクは、なんて強情なんだろう。赤司くんは途端、激しく扱きだした。
「あぁっ! あかし、くっ、や、」
「……黒子」
「あ、なっ、やぁっ……! だめ、やっあ……!」
呼吸が浅く早くなる。絶頂が近い。顔をしかめ耐えるも、赤司くんはそれを許してくれなくて、先ほどよりもさらに早く上下に動かす。
「……そんなやらしい顔して」
「んぁ、やあ、あ、あ、」
「出していいよ」
その一言で、先端を強く引っ掻かれると、身体が硬直する。
「っぅ……!」
低くうめいた後、赤司くんの手の中に欲望をはき出した。虚無の脱力感に見舞われながら、赤司くんの身体からのき、ぺたりと床にへたれこむ。赤司くんも起きあがって、今度は逆にボクの顔をのぞき込んだ。
「本当に体力がないね、まだまだこれからだろう」
「……大丈夫、です」
ぐい、と赤司くんの腕を引き、頬を寄せて目を閉じる。この腕も掌も、髪も瞳も唇も、全部全部、ボクのもの。
頬に手を添えられて目を開くと、唇が重なった。一瞬離れて角度を変えて、何度も何度もキスをする。
また、ちゅっと小さな音を立てて離れたその瞬間、肩を掴まれ一気に押し倒され、足首を捕んで上に足を大きく広げさせられた。
あられもない格好にさせられて下腹部がずくりと疼く。この先に何が起こるのかなんて、分かってる。これから訪れる快感を、知っている。
そこは、多少の抵抗はあるものの、ずぶずぶと赤司くんの指を飲み込んで行く。
「……う、あ、あん……」
こんな所に快感を感じるようになったなんて、なんて恐ろしいことなんだろう。
確実に作り変えられている自分の体。
ぐちゅ、ぷちゅ、と濡れた音がする。その度に、びくんと震え、甘い声が出てしまう。
「……そろそろ、限界なんじゃないか」
「ひああっ!」
指で前立腺をごりっと刺激されると、のけ反って思わず悲鳴を上げる。
「だめ……っ、赤司くんと、気持ち良くなりたいです……」
思わずそう言うと、指で十分捏ね回したそこに、何か熱い固い物が宛がわれる。
身体が跳ねた。身体を少し曲げて見ると、赤司くんのそれが、あたってる。
息をのんだ。それと同時に、侵入が開始される。
「……あ、あ、あ……!」
赤司くんが、入って来る。少しずつ、でも躊躇い無く。ボクの腰をしっかり掴んで、ずぶずぶと分け入って来る。
ガクガクと全身が震えた。もうボクの体は、すっかり赤司くんのことを覚えているのだ。全身がどうにかなってしまいそうなほど熱い。こんなになるのは、きっとボクが赤司くんのことを、すきで、すきで、堪らないからだ。
「……っ、動くよ」
「はいっ、動いて下さ……っ」
ゆっくりと、抜き差しが始まる。今のボクには、そんな動きは物足りない。
もっと、もっと、動いて欲しい。中をぐちゃぐちゃに掻き回して欲しい。欲求を声に乗せる。
「もっと、もっと動いて下さい……!」
「……淫乱」
動きが激しくなった。
ずちゃ、ずちゃ、ずちゃ、濡れた音に耳まで犯される。
その音が証明する、赤司くんがボクを欲しがって穿ってくれることが本当に嬉しくて、だからボクも赤司くんを気持ち良くしたくて、中をきゅうと締め付けると、赤司くんが呻く。
お返しと言わんばかりに、ボクの良い所を的確に突いて来て、ボクは頭から爪先まで痺れるような感覚に支配される。
「赤司くん……赤司くん……っ!」
赤司くんの名前と、あとは、あ音の連続。それしか口から出なくなったボクは、霞んだ頭の中から、やっと一つの言葉を拾い上げて、唇に乗せた。
「あかしくん………すきぃ………!」
その瞬間、頭が真っ白になって、自分が昇り詰めたのを感じた。
ぎゅう、と赤司くんを締め付けて。
「……っ……くろこ……っ!」
赤司くんが、数瞬遅れてボクの中に精液を溢れさせたのがわかった。
とても、とても、幸せだった。
「どうしたんだ、きょうは。随分と乱れていたけれど」
ベッドの中でボクを抱き締める赤司くんは、そっとボクの髪に指を絡ませて呟いた。どうにも答えにくい質問だが、その声音はどこまでもやさしくて、穏やかであたたかい、愛しい愛しい幸福感に包まれる。
「……なに笑ってるんだ」
「いえ、別に」
すきですきで堪らなくて、酷く大きな独占欲に見舞われただなんて言えるはずもなく、「理由なんてありません」そう言うと、ばっと赤司くんが起き上がり、未だに裸のボクを組み敷いた。
「……赤司くん?」
「黒子、あと三回だけ」
「さっ!? だけの使い方がおかしいです!!」
「オレに溺れてしまえばいいんだよ」
「んっ」
あっという間に唇が重なって、巧みに絡む舌先の心地よさに酔いしれて、微睡む頭の隅で、声には出さずぼんやり呟いた。それは違いますよ、赤司くん。
緩やかに愛染
(もう既に溺れている場合、どうすればいい?)
end