黒バス

□恋々ひつじ
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R18










 黒子が泊まりに来た。
 彼が風呂に入っている内に布団を敷いてやった。
 やがて火照り顔でオレのシャツを身に纏った黒子が帰ってきたのだが、オレが二つ並べた布団を見て、黒子はげっそりした顔になった。
 何だとも聞かないで放っておくと、布団の端を持って、ずずずっと部屋の隅に移動させる。
「何のまじないだ」とようやく聞くと、

「赤司くん避けです。赤司くん、ボクが泊まりに来たら十中八九しようとするじゃないですか。あの……あれを……」
「セックスか」
「ズバッと言わないで下さい」

 何を今更、と思うが、恥ずかしがる黒子を見るのは嫌いじゃない。むしろすきだ。とてもかわいらしいのだが、本人は至って真剣なのだろう。

「なんでそんなに嫌がるんだ。オレのこと、すきだろ?」

 そう問いかけると、黒子は湯上がりで赤い頬を更に赤くさせて俯く。そして小さな声で言葉を紡ぐ。


「……すきですよ。でも、だから、なにもしないでただ、二人でくっついて眠りたいだけのときだってあるんです」
「くっついて眠りたいって言ったって、黒子は布団を移動させたじゃないか」
「君がなにもしないならくっつけます」

 まぁ、なんなら一つの布団で一緒に寝ても良いのだが。……結局、したらそうなるのだろうけれど。

 少し頬を膨らませる黒子に、ふむ、と顎に手をやり頷いた。赤くて丸い頬はなんともかわいらしい。

「わかった、何もしない」
「え、本当ですか?」

 オレの言葉が意外だったのだろうか。驚きと喜びが綯い交ぜになったように、黒子の顔が輝いた。その表情に鼓動が少し速まったのは、オレの心の中だけの秘密。


「ああ。オレは何もしないから、上で動け。いわゆる騎乗位だな」

 オレは思いきり動けないのは嫌なんだが、そんなに言うなら仕方ない。それに、オレの上で必死になって快楽を求め、自分で動く黒子も見てみたかった。幼く愛らしい顔立ち、細くて白い身体。それらと厭らしさとのギャップはきっと妖艶だ。
 恥ずかしがり屋な黒子が安心するように、笑って頭を撫でると、小さな頭が左右に揺れた。


「その発想が駄目だって言ってるんです!」
「うるさいな、もう抵抗しても無駄だって事くらい、分かってるだろう?」

 至近距離。額同士がこつんとぶつかり、彼の顔が視界を覆う。まだしっとりと濡れた髪が頬に触れて、冷たくてくすぐったい。
 熱い頬に触れて、薄桃色の唇に啄むように口付けると、黒子も観念したようで、力が抜けたみたいに息を吐いた。






 何度も口付けを交わしながら、急くように互いの服を脱がしていく。
 一糸纏わぬ姿になる頃には、黒子も随分と熱っぽい瞳でオレを見ていた。
 黒子の腰を引き寄せ、その中心を握り込む。

「ひゃあっ、ん……っ!」

 声を上げて背を反らせるが、慌てて声を抑えるように口元を両手で塞いだ。
どうやら何時もどおり、感度は良好なようだ。
 黒子の細い手首を握り、無理矢理口から剥がす。

「あ……、赤司、くん……?」
「黒子、声出して」
「や、でも……!」
「嫌なのか?」


 ぱっと手を離すと、物欲しげな潤んだ瞳を此方に向ける。その弱々しい表情が、余計にオレを煽るのだと言うのに。

 片手を伸ばしてその頬を撫で、柔らかく耳朶をくすぐる。首を竦める黒子の姿が、普段以上に幼く見えて、ふっと笑みが零れた。


「黒子、そろそろ我慢出来ないんじゃないか?」
「……はい」

 判りきったことを訊ねれば、黒子は予想以上に素直に頷いた。

「ん……」

 後頭部に滑らせた手で黒子の頭をそっと引き寄せ、何度も何度もキスをする。そうして彼から完全に主導権を奪って、しかし優しく囁いた。

「……自分で、挿れられるね……?」

 折角のシチュエーションだ、有効活用せねば勿体ない。
 既にオレ自身は完全に勃起しているし、黒子だって限界が近い筈だ。彼に断れる理由はない。

「赤司く……」
「出来る、よね?」

 縋るような視線を強めの言葉で封じて、黒子の手をオレのに直接触れさせる。どくどくと脈打つそれに顔を赤らめる黒子を、今更だろうと笑った。

「ほら黒子。腰、浮かせて」

 リードしながら黒子の腰を持ち上げ、けれどあくまで彼自身の意思で行動させる。全て此方がお膳立てしたのでは、支配し服従させる喜びが殺がれてしまうから。
 とはいえそんな目論見があろうとなかろうと、こうなることに変わりはなかっただろう。黒子は恥じらいながらもオレを入り口へと導いていった。

 触れる後孔がひくんと震えて、ついと腰を揺すってからかえば、黒子は「うぅ」と弱々しく呻きを漏らした。

「い、意地悪しないで下さい……っ」
「意地悪も何も、黒子がとろとろしているからだろう」
「……やっぱり意地悪です」

 拗ねたように唇を尖らせながら、しかし漸く腹を括ったのか、黒子は握ったオレをしっかりと固定し、その屹立の上にゆっくりと腰を落とした。

「っ、んぁ……っ」
「……っ」

 眉を顰め、小さく息を洩らす黒子。その顔を見詰めるオレの面も、今は彼同様に歪んでいることだろう。
 黒子の中はその体と同じに熱くて、絡み付く粘液が殊更に色欲を煽り立てた。


「ごめんなさい、痛いです、よね……っ」

 眉根を寄せたオレを気遣ってか、切なく表情を崩す黒子に、大丈夫だよと掠れた声で返した。
 ヤる方とヤられる方なら、どう考えても後者の痛みが勝るに決まっている。それなのにこちらの身を案じてくるのだから、まったく、健気というか何というか。

「……かわいすぎるよ、黒子」

 優しすぎるんだ、彼は。下がる眉すら愛しくて、苦笑を湛えながらキスをした。
 深いキスで舌を絡ませ、顎を伝う唾液にも頓着せずにまた唇を重ねる。伸ばされた腕を首に回して抱き着かせ、そうしてまた愛を紡いだ。

「赤司くんっ、あか、しく……っ!」

 がり、と背中に爪が立てられて、恐らく蚯蚓腫れになったであろうそこがひりひりと痛む。けれどその傷も彼のものと思うだけで胸が溢れ、オレは更に激しく黒子を揺さぶった。

「っあ、あ、あああっ! 赤司くんだめ、だめですっ、そんなしたら……っ!」

 言葉と共に黒子の後孔が収縮を始め、彼の絶頂が近いことを伝える。

「イく、イっちゃ、イっちゃいます……っ!!」
「……それ、じゃあ」

 律動に合わせて自らも腰を振る黒子の痴態に必死に吐精感を抑え込みながら、余裕めかしてゆっくりと言った。

「一緒に、イこうか」
「っ!! っあ、あ―――!!」


 腰に添えた手で黒子の体をぎりぎりまで浮かせ、そしてそれを重力に従って落とす。奥深いところを灼熱に貫かれ、黒子は長く高い悲鳴を上げて昇り詰めた。

「―――っ!」

 食い千切られそうな締め付けに我慢が出来ず、彼の熱を浴びながら、オレも黒子の中に精を吐き出した。










「黒子、なにしてるんだ?」
「……布団、くっつけます」

 黒子は壁際に寄せられていた布団をずるずると引っ張って来て、もう一方の布団とくっつけて並べた。
 くすりと笑う。だって、そんなことしなくったって、

「……あの」
「初めに言っただろ、くっついて寝たいって」
「あれはその、でも、やっぱりあんなことした後にこれは……恥ずかしいです」

 それこそ、今更だろう。
 腕の中に閉じ込めた黒子を、ぎゅっと強く抱きしめる。もう二度と離したくない、絶対に離さない。誰にも渡さない。自分でも子供じみた独占欲だとは思うが、こればかりはどうしようもない。
 ああ、ここまで考えて再認識させられた。オレは黒子に狂おしいほど恋をしていたのだ。

「赤司くん……」
「うん?」
「ボク、赤司くんが大すきです」
「うん、オレもだよ」

 耳に届く甘い声音がくすぐったくて、鼓膜が痺れるような感覚に満たされる。
 眠ってしまうのが勿体無く感じてしまうほどに、幸せだった。






恋々ひつじ



赤「でも、したくないって言ったわりにノリノリだったじゃないか」

黒「気持ち良くて幸せで、段々訳が分からなくなってきゃうんです」

赤「……なかなかに大胆発言だな」

黒「そうですか? まぁ……君とのあれ自体はきらいじゃないです。すきです」

赤「セックス?」

黒「……だから! はっきり言わないで下さい!」

赤「お前の恥ずかしい基準が本当によく分からないよ……」












end

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