ふぉー

□願わくは尽きぬ永遠を
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 久々の逢瀬で散々睦み合った後、ベッドでふたり、何も纏わぬ気だるい体を休ませる。
 テツヤが「この時間がすき」だというから、付き合うのが恒例となっていた。
 僕の肩に頬をすり寄せ、目を細めていたテツヤは、僕の視線に気づいたのか、「なんですか」と怪訝に問うてきた。上目遣いの小さな少年をかわいいと思ってしまう。


「テツヤ」
「はい?」
「テツヤ」
「なんですか、赤司くん」

 甘えていると思ったのだろうか。くすっと笑いながら、投げ出された僕の手の甲を指で撫でる。

「テツヤ、結婚しよう」

 言うと、ぴたりと彼の動きが止まった。

「……男同士じゃ、結婚出来ないです」
「それは法律上の話だろう。結婚というのは、もともとは神への誓いだ。ふたりが誓えば、契約は成立だよ」

 僕がそう言えば、テツヤは微笑んだ。

 これからも共に歩んでいきたいと思っている。大学を卒業して、社会に出て。いつか、文句のつけようがない社会的ポジションにつくことを切望しているのも、いずれはテツヤを養いながら生活したいと考えてこその決断だった。
 うつ伏せていた上体を起こし、うろ覚えのセリフを暗唱する。

「富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、死がふたりを分かつまで、愛を誓い、互いに寄り添うことを、誓うか」
「なんですか?」
「誓いの言葉」


 その先の未来へつながる今が愛しい。
 テツヤの手を捕え、揺れるターコイズブルーの瞳をじっと覗く。
 しばらくそうしていると、負けたとでも言うように、テツヤが笑いを零した。

「赤司くんのいない未来なんて、考えられません」
「……誓うかい?」
「誓いますよ、赤司くん。ボクの人生は、君のモノです」

 迷いのない、真っすぐな、言葉。
 その言葉を少しずつ理解し、噛みしめながら、ああそうかと、はっきりと自覚した。
 最初から当たり前のことだった。


「ああ。僕の人生は、テツヤのモノだよ」

 そっと、テツヤの唇に自らの唇を重ねる。
 温かい。生きている。
 自分の一部は、ここにあるのだ。
 そして自分は、彼の一部でもある。
 互いが互いを補い合って、そうしてやっと一つなのだ。

 やわらかな黒に染められた部屋に響く時計の秒針は、未来を今に刻んで進んでいく。




願わくは尽きぬ永遠









end

* * *

いつもお世話になっている大すきなニニ子さん、お誕生日おめでとうございます!
赤黒を通し、ニニ子さんに出会えたことに感謝しつつ、押し付けさせて頂きます…!

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