ふろむA

□浅凪さん*虹色ため息
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「まじうめー!火神の料理!」


「それほどでもないですよ」


「何でお前が答えてんだよ黒子!」



部活後の日曜日、

前に火神の家に来て以来、こうしてバスケ部の皆で寄ることが多くなった。


皆が期待しているのは火神の作ってくれる料理だ。絶対に手伝わせまいとする皆の態度に、やや不満そうな顔をして座っているカントク。



「キャプテン、どーぞ」


「おーサンキュ、ビーフシチューとかお前意外とお洒落なのな」


「そうすか?……あっおい黒子!今俺の皿にブロッコリー入れただろ!?」


「なぜか入ってたので」


「わざと入れたんだよ!」


隣で騒ぎ出す。

黒子は当たり前のように火神の隣に座っている、もう慣れたけど。



以前尋ねたことがある、教室でも部活でも家でも隣で飽きないのかと。
そうしたら、



『隣がいいんです』



真顔でただそう言った。


さらりと言う言葉に、それを聞いていた火神も当たり前という顔をしていて、

茶化す気満々だった伊月と俺は急にやる気を削がれて、一緒にすごすごと戻ったのだった。



「なんだ火神、黒子好き嫌い多いのか?」

尋ねる伊月に呆れた顔をする火神。


「好き嫌いっつーか、イヤなもん何でも押し付けるっつーか」


「押し付ける?」


「よくあるんすよ、この間だって歯ー磨いてたら…」





『あっ』


『どーした?』


『歯磨き粉、出しすぎちゃいました』


『歯ブラシから垂れてるじゃねーか』


『いいです、全部使いま…………っう、ぇ』


『おい大丈夫か?出せよ』


『…あげます』


『は?………っん、………っ辛ぁ!!』




「…ってことがあったんすよ」


「…へぇ…」


「すっげー辛くて辛くて」


「本当あれは辛かったですね」


「何言ってんだ俺の方が辛かったに決まってんだろ!ほとんど俺に寄越しやがって」


「あのさぁ火神、それってその…口で?」


「そーっすよ」


「………ですよね…」




日向さん、帰りませんか。


そうですね、伊月さん。



目線で会話を交わしていると、隣ではまた口論が始まっていた。




「だからお前これは自分で食えよ!そっちの皿にも残してるし!」


「これ苦くて好きじゃないです」


「いっつもそうやっていらねーもん寄越してくんだからよ」


「…意地悪ですね」


「あ!? 違うだろ、好き嫌いしたら健康に…」


「食べてくれないならいいです、青峰くんの家でご飯食べますから」


「わーった!わーったよ!!ほらそっちの皿も貸せよ!」


「ハイ」



ニコニコと笑う黒子。


「…火神は黒子に甘すぎだろ」


「おい帰ろーぜ、ていうか帰れって黒子が言ってる気がする。あの背中」


「え?もう帰るのか?今日は皆で泊まるんじゃないのか」


「木吉お前空気読めよ!」


「火神ー、そろそろ帰るわ俺ら」



気が付くと火神たちは台所に立っていて、

振り返った黒子の手にはティーポットが握られていた。



「え?皆さんの分のお茶入りましたよ」


「いや帰るわ、ありがとな黒子」


「そうですか?」



大事そうに抱えたポットは白の無地、火神は紅茶なんて入れるタイプには思えない。


黒子が欲しがって一緒に選んだんだろうか、今じゃすっかり黒子の私物が散らばる居間と洗面台。




「また明日なー」


「うす」


「また明日」



『当たり前』のように火神の隣に立ってこちらに手を振っている。

黒子は見送られる側じゃない、見送る立場なんだ、火神と一緒に。



明日も明後日も、こうやって見せつけられるんだよな。いいけどさ、慣れたから。



「いやでも何かな、何か…」


「羨ましいよなあ、あんなに美味いものばっかり作ってもらえて」


「そーいう話じゃねぇよ木吉」


「火神ってケーキも作れるのな」


「え?マジ?」










「黒子、なんでお前ケーキあるって言わなかったんだよ」


「…ああ」


「せっかく用意しといたのにホールで残っちまったな」


「わざとです」


「は?なんで」


「他の人にあげたくなくて」


「……じゃーいっか」


「お茶、入れ直しますか?」


「いいよさっきので。食おーぜ」


「はい」









「あんまり皆に手料理作らないでください」


「あ?なんで」


「食べるのは僕だけがいいです」


「嫌いなもん残すくせに?」


「…………」


「悪かったって!」








「火神くん、思ったんですけど」


「ん?」


「やっぱり二人きりのが落ち着きますね」


「あ、俺も同じこと言おうと思ってた」


「でしょう?」


「うん」


「キスもできるし」


「うん」





「…して?」


「………ん、」











*******








* * *
お礼!

『鈍色に光るきみの、』の浅凪さんにリクエストさせて頂いた、無意識にいちゃつくバカップル夫婦とお前らまたかよな誠凛メンバーです!!
あああん……!こんな私欲リクエストをこんなにも素敵な小説にして下さるだなんて!もう最初っから最後まで萌えノンストップですううう…///夫婦すぎてもう!何なの!?この二人から溢れ出すドピンクなオーラは…!歯磨き粉口移しとかお前ら…末永く爆発しろちくしょう……!

日向くんと伊月くんの圧倒され具合もたまらんくツボで口元の緩みが止まりませんどうしましょう!天然木吉うおおー!かわいいぞー!
青峰ちらつかせる策士黒子も焦る火神ももう本当に愛しい!
こんな素敵な小説をありがとうございましたー!(*´∀`*)


 

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