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□◆遥かなる旅路
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◆遥かなる旅路(30000hit紫音様リク☆ゼロミト)
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「可愛いよなぁ。ミトスちゃんは。」

「……。」
煩わしい。
殺意の籠もった視線を向け脅し文句を吐き竦ませることも可能だ。だがそれすらも億劫で、無言でカップを掴みミルクティーを啜る。
「あーその仕草!目を伏せてミルクティー飲むの!儚げな感じだよなぁvv」
告げられた感想に、眉をしかめ視線をさまよわせる。
ただ喉を潤しただけで何故儚げだなどと言われなければならないのか。
少し前に部屋に入ってきてからずっとこの調子だ。その辺の町娘を口説く調子で僕に軽口を叩く。

本に集中したい。

いい加減煩わしくなって、
「黙れ、消えろ。」
目は文字を追ったまま、そう二言。
しかし当然のごとく、ゼロスはそんなことでは怯まなかった。
「好き。大好き。」
止めろ。

心の中で強く呟いた。
睨みつけてやろうと顔を上げると、ゼロスと視線がぶつかる。先程までの軽い空気も鋭いものに変わっている。その真っ直ぐな視線に、背中にじわりと冷や汗が浮かぶのが分かった。

止めろ。

「すき。」

分からない、そんなの。

「愛してる」



「分からない…」


「は?」
俯き、僕の発した言葉にゼロスが間抜けな声を上げた。


分からないんだ。
理解できない。

僕はお前の境遇を利用し、苦しめてる存在なんだ。
殺したい程に憎い存在のはずだろ?

そんな相手に例え冗談だって、何でそんなことが言えるのか。
信じられない。

「嫌いなはずだろ…」
呟き、顔を上げる。目の前のゼロスは、パチパチと音がしそうな程目を瞬かせている。
「…それ、マジで言っちゃってんの?」
「…普通、憎む…。嫌いこそすれ、好くことなんて……。」
ポソポソと紡ぐ言葉は、しかし最後まで続かなかった。
先程までの驚いた様な、呆れている様な表情は鳴りを潜め、燃える様な瞳が僕を睨み付けている。


「道理で…全然伝わってないと思ったら…」
何が伝わってないのか。
聞き返そうとしたが、できなかった。
声が出なかったのだ。
何が起きたのか理解した時には、天井を背にゼロスの顔が迫っていた。
「そんな風にしか…考えられなかったってのかよ…」
怒りさえ滲んでいる真剣な瞳に声を出せないでいると、目前の顔がコロッと悪戯な笑みを全開に浮かべる。
「もうこれはじっくり解らせてやるしかないっしょ。」


「な、何を…!」
何が何だか。
分からないって顔してんな。
からかわれてるかと思ったら、いきなり怒って。
怒ってるかと思ったら、満開の笑顔になって。
俺様の表情の変化の意味を全く理解できてない目の前の美少年は、その場の状況に着いていこうと考えることに集中している。その隙に服の合わせを開いてしまうと、見たことがない程顔を真っ赤にして、バカみたいに口をパクパクさせる。
「……!!」
言葉もないミトスを余所に、目の前の白い胸板を凝視する。

やべぇ。


ちょっと前を開いただけなのに、この色気は何だ。

色事に関しては荒技を積んでいると自負している俺だが、目の前で戸惑っている彼の姿に、どうしようもなく興奮してしまっていることに気付く。
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