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□約束は、海のみえる丘で
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衰退世界シルヴァラント。

テセアラとは表裏一体の世界であり、互いにマナを食い合う世界。

神子が命をかけて世界再生の旅を成功させるまで、一方は繁栄し一方は衰退する。まさに、人の世の縮図のような弱肉強食の競争関係。互いにババを押しつけあう滑稽な2人トランプ。

絶対君主の手のひらで踊る、哀れな世界。





平和でのどか以外に、誉め言葉が見つからないイセリアの地でゼロスは1人で空を見上げた。

仲間たちは、各々が村に散って思い思いに休息を楽しんでいる。特に、故郷であるロイドやジーニアスとコレットのはしゃぎようは凄まじい。よく言えばあどけない表情、悪く言えばバカのように走り回ってガキみたいに笑っている。







気楽そうでうらやましいね…。

ゼロスは口元に失笑を浮かべながら空を見やる。視線の先には救いの塔。

雄大で、いかにも神の許しを象徴するありがたそうな姿。だけど、それは仮初めだと知ってしまった自分には強大で恐ろしい力の片鱗にしか見えない。









「負けたら、セレスがこの重荷を背負うのかよ…」



思わず呟いた言葉の、途方もない重圧にゼロスは俯いて耐える。震える手は、押さえつけてもその怯えを隠してはくれなかった…。
























約束は、のみえる丘で



- a secret happiness -







[ キミの不安や悲しみ全部

     私の羽根で、空にサヨナラ ]






















「どしたのゼロス?」

「どわぁ!?こ…コレットちゃん脅かさないでよ」

唐突に、視界を覆われてゼロスは思わず叫び声をあげた。

我ながら、情けない声だと自己嫌悪しつつ、焦点を合わせれば自分より幾ばくか淡い空色の瞳と視線がぶつかる。

心配と好奇心が混ざったようなまん丸い瞳に、思わず魅入りかけて、ゼロスは首を振った。その姿が、よほど不思議だったのかコレットは首をかしげている。

先ほどまで、ロイドたちと走り回っていたから接近に気付けなかったらしく、ゼロスはゴホゴホと咳払いをして場をごまかしてからコレットに笑いかけた。





「なんか元気ないよ?体調悪いとかかな…?」

しかし、根本的に空気が読めないコレットには愛想笑いはあまり効果はなく、先ほどより心配が強くなった空色の眼差しにゼロスは後ずさった。

視線を意識的にそらせば、菜園(と呼べば聞こえがいい)の向こうでは相変わらずロイドやジーニアスが子どもたちに混じって走り回っているのが見える。

話題をかえる意味も含めて、

「コレットちゃんは遊ばねぇの?」

気になった事を聞いてみるとコレットは改めてロイドたちを見つめてから、

「もう沢山遊んだよ」

楽しそうに笑った。

それは、心の底から遊びまわって楽しんだのが判る屈託のない笑みで、ゼロスの表情も自然と柔らかくなる。





「ねぇゼロス、本当に体調悪いんじゃないの?」

「でひゃひゃひゃ、俺さまケンコー!コレットちゃんの気のせい気のせい」

にこにこと笑っていたコレットは、しばらくゼロスを見つめるともう一度、先ほどと同じ質問をする。しかし、先ほどよりはニュアンスも軽くなっていて、心配してるけど杞憂かと感じてるように思えた。

ようやく、話しをごまかせそうな空気になった。ゼロスは内心で安堵しながら自分でも満点をつけたい笑顔を浮かべて、ひらひらと手を振ってみせる。

すると、コレットは何が嬉しいのか笑顔でウンウンと頷くと

「じゃあ、ちょっと散歩しよっ?」

唐突にゼロスの腕を掴んだ。

もはや、一言二言交わしてさようならという流れだと確信していたゼロスは、その突拍子もない言葉を処理しきれず笑顔で硬直する。

そして、言葉を理解するより早く、見た目を裏切る超怪力に引きずられてゼロスは村の外へと連れ出されていた。









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