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□comfort *
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夜の帳も降り、皆が寝静まった中、ゼロスは抜け出した。
洞窟を基礎に作ったドワーフの家は質素なもので、大人数で暮らすようには出来ていない。
そんな中で窮屈な雑魚寝をする気は毛頭無い。
特にゼロスの屋敷ならば、満足の行く部屋が提供できるのだから。
それよりも。

「夜更かしは、身体に毒ですよ。神子様」

月光に照らされた、金色の髪の少年が吐く吐息に交ぜて呟いた。
夜風に舞う、コレットの神衣に良く似た白の裾が、奪われていく体温を示しているようだった。
上着もなく、細い肩を冷たい風に晒して、ミトスは微笑んだ。

「なんですかユグドラシル様。もしかして、夜這い?」
「ふ・・・、お前と同じで、あいつ等と一緒にいるのは、良心が咎める…なんてね」

くすと漏らした声は明らかにゼロスへの嘲りの色が滲んでいて、癪に障った。
少なくとも、言葉とその裏に隠れている真意は真逆なのだろう。
月の下で氷のような美貌を持った少年が、ゼロスの耳元で囁く。

「ああ、それとも、寂しかったの?あの中では、お前は異端だものね」

裏切り者のゼロス。ボクが慰めてあげようか?と、そっと囁く。
ぺろとゼロスの頬をミトスの小さな舌が掠めて、ひやりと冷えた。
ゼロスの中で、理性が切れた。
その後は、もう自分でも何がなんだか良く分からない。
悲鳴のような声が、段々弱弱しくなっていくのだけは鮮明に覚えている。
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