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□君は僕の光
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リゼルグの元に来てからというもの、苛立ちは最高潮だった。

あれほど、僕を追いかけて何度も何度も挑んできたというのに、
今はといえば口を開けば「急がしいんだけど、何か用?」「手短に、要点を纏めてね」とのたまった。

彼の両親を殺した事、僕は後悔などしていない。
そうする必要性があったという事、そう思ってそうした事についてはこれっぽっちも罪悪感など無い。
どうせ滅ぼしてやるつもりだったのだから。
しかし、僕の信念の所為で彼を一人にしてしまったのは、また事実だ。

正直なところ、親を亡くした苦しみは良く知っている。
それを思えば彼をそのまま殺してしまう方が彼のためだったのに、生かした。
僕のエゴだった。そういう事だ。
其のツケを清算するつもりでここに来たはずだった。


だというのに、何だこれは。
開口一番、「ボク、明日早いからまた後でね」とベッドに倒れこんだリゼルグ。
驚いた様子も無く、ネクタイを緩めただけのまま疲れ切った様子だったのだが。
それだけならまだしも、僕をその体に敷いたまま寝息を立て始めたのだ。
あれだけ僕に執着していたというのに、等閑過ぎやしないか。そう考えるだけで苛々は募る。

以前は、可憐と言っても過言ではない程華奢でか細かったその体は、すらりと伸び男性へと成長を遂げていた。
少女のようだった顔立ちは父親に似て端正な輪郭に変わり、切れ長の瞳は優しげに細められる様も、無駄のない筋肉の付いた体も。
世界有数の名門大学へと進学し、それはそれは女に好かれるだろう良い男になっていた。

確かにリゼルグは他の事など見る余裕もない程に、我武者羅な生活を送っていた。
・・・しかし!そんな事、自分には関係ない。
苛立ちを紛らわすために彼の邪魔をした。これでもかという程に。
「君さ、本当に何しにきてる訳?」
とうとう堪忍袋の尾が切れた彼に、半ば強姦の様に事に及ばれたのだった。

以来、彼の帰りを待ち、彼の仕事が終わるのを待ち、気まぐれに抱かれるのを待つという自堕落な生活が続いた。
いつもという訳では無く、リゼルグは憂さを晴らすように抱くのだ。
特に機嫌が悪いときほど、しつこく愛撫を施し快楽を煽る。
もう嫌だと言っても止めてもらえずに何度も高められ、何も分からなく程に乱された。
それこそ翌日は立ち上がれないほどに。(生身で無いはずの自分が立てないなんて深く考えたら負けだと思う)
このままではいけないと思う一方、此処から去れない理由は、自分でも良く分からない。







今日は花の香りをさせて帰って来た彼に、「さぞかし女にもてるんだろうな」と聞いた。
少し考えるそぶりを見せた彼は、男所帯では浮いた話も少ないのさと笑う。
しかし陰りのあるその笑顔に何かあったのだろうと、嫌な予感がして身を翻した時には遅かった。
捕えられた手をそのままに、乱暴にベッドへと押し倒される。
「だからハオが慰めてよ」
すらりと長い指。丸みのとれたそれに問答無用とばかりに掴まれていた。・・・男の手だった。

リゼルグの口癖は「こんなに君、小さかったかな?」と。
当たり前だ。死んだ身の僕とは違い、お前は成長しているのだから。
細い、小さい、と繰り返す彼に、お前は性格が悪いといったことがあるが、彼はこともなげに、「君のお陰だよね」と笑みを浮かべた。

布団に沈み、抗議の声を上げようとしたが、直ぐに圧し掛かってきたリゼルグに軽い口づけで塞がれた。軽い酒の匂い。

「ね、ハオ。君の方こそ女の子とセックスした事あるんでしょ?」

彼はこういう下世話な話が好きだと気がついたのは最近だった。
どうだったの?と興味津津だった癖に、其の後と言えば決まって不機嫌なのだから手に負えない。
正直な所は男に抱かれるよりは女を抱く方が勿論好きな筈だというのに。

「本当に細いね。この中にボクのを咥え込んでる何て嘘みたい」

ふふっと笑う彼は、いつの間にか着物の中に手を入れて太腿の内側をなぞる。
ぞくぞくと走る衝動に身を捩るが逃げる体を許されず、顔の後ろに手が回されて無理に口づけられる。
ぬるりと侵入してくる厚い舌に、自分のそれを絡め取られて息が上がってくる。

「・・・・・っん、ぅぅ・・・・ッ」

じゅっと湿った音を立てて吸いついたり、角度を変え喉の奥の方まで舌で探られ、生理的な嘔吐感に涙が浮かぶがそれでも離さない。
口の端から呑み込めなかった唾液が伝い、涙が滲んだ所で漸く解放された。
かわりに反応した自身を掴まれ、先走りを指先で掬いぬるぬると上下させ始めた。
片手に収まる未熟なそれが完全に勃ちあがるのを、満足そうに眺めた。

「物欲しそうな顔してる。」

捕食者の目をしたリゼルグは、ベッドサイドに置いたローションで濡らしたその長い指を後孔へとつぷと差し込んだ。
慣れた行為だったが、奥へ奥へと指で探られ掻き混ぜられる。
良い所を的確にこすられて、催促をするようにきゅうきゅうと中が締まった。

「あ、あ、・・・・ひん・ッ」

「かーわいいね」

喉でくつくつと嘲うリゼルグ。
指を二本に増やされ体を抑え込まれ、ぐちぐちとかき乱される。
堪らず逃れようと身悶えるが、ギラギラとした眼でそれを嬉しそうにみるリゼルグを見て無駄だと悟る。
何故ならこうして抵抗を見せる事こそ、何より興奮を煽るのだから。
唇を噛んで声を漏れないように手の甲で口を押さえるが。


「何でそんなに澄ました顔しているの、もっと声出して?」

この時だけは、自分だけを欲する彼に、どうしようもない満足感を覚えてしまう。
こいつがこんな顔するのが悪い!




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