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□おまえのためじゃない
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<葉/放課後教室にて>


「筆箱がねえぞ・・・・?」



ランドセルの中に直したはずの筆箱が忽然と姿を消していた。
全部中身をひっくり返してみたが、最後に底で押しつぶされたPTAの案内状が乾いた音を立てて落ちた。
まずい・・・・。
何がまずいかって、PTAの案内状は別に母ちゃんとか父ちゃんはこねえの知ってるから
出すだけ無駄だから別にいいとして。(本当は良くねぇんだけど)
兄のハオも、こんなのは出さずにそのままにしている筈。
几帳面な性格の双子の兄だが、提出物になると話は別だ。

箱、と言っても布製のそれには、鉛筆や消しゴムを入れていただけでなくて、ハオから貰ったキーホルダーをつけていた。
土産物のキーホルダーが好きな彼のコレクションの一つで、あんまりオイラが物欲しげに見てるもんだからくれたんだ。
『無くしたら承知しないよ』と、おっかない脅し文句と一緒に。


「やべぇな・・・にいちぇんこえぇもんな・・。」


図体の大きなクラスメイトと、子分よろしくひっついて回る数人が、こちらを見てゲラゲラ笑っている。
嫌な感じだ。早く、探しにいかねぇと。
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