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□ミトスがうっかりしたはなし
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時期的にバレンタインなのにバレンタインしてないレイズ時空ロイミトのスケベ未満

※注 ねつぞうがすごい。




世界情勢とは裏腹に、ボクらはそこそこに穏やかな日々を過ごしていた。
何もせずにぼんやり過ごすのは気が遠くなるほど久しぶりで、ボクは暇を持て余していた。
そんななか姉さまと花を探しに行ったりする上で気がついたことだけど、本来のボクらの世界に存在していた植物がこの世界にも写されているということ。
全く同じものでは無いのかもしれないので、ボクはそれらを集めてアジトへと持ち帰り、暇な時は土壌と植物のことを調べていた。
草について知識があるのは大昔の大戦時の名残で、食べられるのか食べられないのか自分の体を持って思い知っている。
何かの足しになるかもと思い、薬草になりそうな草を集めていたときの事だ。

今日の収穫は、香り高い白い花だった。
固まって咲いていたものを持てるだけ摘んで蜜を薬瓶に集めていると、甘い匂いに誘われて遊び回っていた鏡精たちが飛んできた。
「ミトス様何してるんだ?」
「と〜っても甘い匂いがします〜!このお花ですね〜」
カーリャとコーキスが机の上にあった自分の身の丈ほどある花を手に持ってふわりと浮かび上がる。幼体の鏡精2人が白い花を持つ姿はとても愛らしい。
「溶かしたチョコやバターの香りも素敵ですけど、カーリャはお花の匂いも大好きです〜」
揺れる花からは更に甘い匂いが振りまかれる。
「でもなんだかこのお花の香りを嗅いでると、頭がふんわりしますねぇ〜」
「パイセンもか。オレ、なんか酔いそう」
フワフワと空中で揺れる二人の持つ花をつまむ。うっとりとしたふたりには申し訳ないけど。
「二人とも、良い子だから手を離して。その花には毒があるみたいだから」
ぎょっと二人が目を見開く。
「えええええ!ミトス様先に言ってくださいよぉ!!」
「うぉぉぉ!!!??」
二人が揃って花から手を離すが、空中でよろめいたコーキスが後ろの小瓶にぶつかりカウンターの上から落ちた。
「コーキス!」
ボク手を伸ばしてコーキスを受け止める。
カウンターの上で中身の蜜がこぼれ、コーキスはその上を転がったようで蜜にまみれてボクの手の上へ落ちてきた。
「いてて…」
「怪我はない?」
「大丈夫だけど、瓶の中身こぼしちまった。ごめんミトス様」
「いいよ、それよりすぐに洗い落とそう」
やむなく残った蜜をそのままに、カーリャと共にコーキスを連れて洗面所へと向かう。経口摂取ではなかったとはいえ、身体の小さい鏡精だ。早急に洗い流してやらないとと焦っていた。
皆が飲み物を取りに来るであろうカウンターの上に、花の蜜を置きっぱなしにして。

「あ、ミトス。ここにあったダークボトルなんかいつもと味が違うんだけどさ」
「「ああーーーーーー!!!!!」」
「…………」
鏡精達が声を揃えて悲鳴を上げ、ボクは閉口した。先程コーキスがひっくり返した瓶を持ったロイドが首をひねっている。
よりにもよって!お前は!
「……本当に癖が悪いね、人のものに勝手に口をつけたら駄目だって教わらなかったのかな?」
頭が、痛い。盛大にため息をつくボクと慌てふためく鏡精たちを交互に見比べたロイドは何かまずいことをしたと理解したようだ。
「悪かった!大事なものだったか?」
「ロイド様それ毒なんだ!」
「はわわわどうしましょう〜!今度はロイド様が大変です〜〜!」
「毒!?えっ、なんでこんなところに!?」
「コーキスとカーリャは落ち着いて。大丈夫、命に別状はないから。……ロイド」
じろりと睨みつけるとロイドがビクリと体を縮める。
「お前の部屋で少し話をしよう」
「わかった」
このアジトではボクは姉さまと二人で一つの部屋を使っているから、ロイドの個室へと向かうことにした。


ロイドが部屋へ入り、ボクはその後へと続く。 
机とベッドと簡素な椅子があり(ボク達の部屋とほぼ間取りや家具は同じ物だ)、明かり取りの小窓からは柔らかく光が差し込んでいた。
ロイドは少ししんどそうな様子でベッドに座ったから、ボクは向き合うように椅子に腰掛ける。はあっとロイドが一つ息をした。
「あのね、単刀直入に言うけどお前が飲んだのはティアの花の蜜」
「毒、なんだよな…。なんであんなところにに置いてたんだよ」
「それはボクの不手際……命にかかわるほどではないんだけど」
「けど?」
ロイドは前のめりにボクの顔を覗き込む。居心地が悪そうにしているロイドに、やはりと思って溜息が出る。
「薄めたほんの一滴だけなら惚れ薬みたいなものだけど、誰かさんがそのまま飲み干すとは思わなくてねぇ。採ったままの蜜は媚薬みたいなものだ」
「は??えっ、ごめんよく分からないんだけど、どういうことだ?」
ロイドはぽかんと口を開けた。
「つまりお前の生殖器がそんな風になってるの、半分位はボクのせいってこと。」
「…!!!」
下半身を指すとみるみるうちに顔を赤くして、両手で隠そうとするロイドに、そりゃそうだよねとため息をつく。 
ロイドが部屋に入ってから不自然に前のめりの体勢は反応しているそこを隠すためだ。
クラトスとよく似た色の瞳が熱を帯びて、ゆらゆらと潤んで揺れている。そろそろ花の毒がまわってきているんだろう。
「見るなよ…」
毒の効果と、羞恥で耳まで真っ赤になったロイド。
「見るなも何も…。そういう毒なんだもの。煮詰めて蒸留した状態じゃなくてよかったね。とはいえ摂取量が多すぎるのも気になるところ」
残っていた量はざっと5回分。
「手っ取り早く手でヌいてあげようか?」
手で扱く仕草をするとロイドが、じわっと目を逸らす。
「ミトス」
情けない顔をしたロイドは泣きそうな声を出した。
「俺、その、お前に酷いことしたくてたまらないから、一人にしてもらってもいいか…?」
ふぅん。そう。椅子から立ち上がり、ロイドの膝に乗り上げる。二人分の体重がかかったベッドはぎしりと軋み、ロイドはびくりと肩を揺らす。
「いいよ」
「え?」
「このボクが花の蜜の効果が無くなるまで付き合ってあげるって言ってるの」

ロイドがごくりと生唾の飲み込む。

「紳士ぶってないでボクに"酷いこと"してみせなよ」



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