海に恋した少年

□いきたい理由
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頭の中は必死に悪者を作って
自分の都合のいいようにそいつを責め立てている


おまえのせいだおまえのせいだおまえのせいでこうなったんだ



そうでないと自分が保てないから、何度でも何度でもそれを続ける。





誰が悪いのか
誰も悪くないはずなのに

何なのだろう、この結果は。





誰にもぶつけられない辛い気持ちを、耐え難い苦しみを、味わいながら先の見えない未来へ進まなければいけないのなら。


こんなに苦しくて苦しくてやりきれなくて、ばらばらになりそうになるくらいなら。



「もういきたくない」



こきゅうをしたくない。
すべてやめてしまいたい。


なくことも
かんがえることもしたくない


だっていきることはこんなにつらい。







「じゃあ死ねよ」

「………、」


不意にかけられた声に目を開ける。
――声で誰なのかはもう解っていた。


「死ねよ。おれが殺してやる」

すらりと刀の抜ける音に視線をあげると、切っ先がぴたりとこちらに向いていた。
そこには確かに殺意が込められているのに、不思議とそれ以上動く気はしなかった。



「どうしたい。
苦しんで生きてることを実感しながら死ぬか、眠るようにあっさりと死ぬか。
おまえが決めろ、おれはどっちでもいい」

「……」




目を、みた。


この人は今何を考えているんだろう。わからない。ただまっすぐに見つめてくるだけだ。




私の目を、まっすぐに見つめてくるだけだ。





「……どっちでも…いいよ」

「あァ?」

「………ローさんが決めて。もう、どっちでもいいの」


その目から視線をそらせて、小さく呟く。生も死も、そんなのどっちでもいい。どうでもいい。




―――身代わりにすらなれない命なんて、どうでもいい。



痛みも悲しみも引き受けられないならせめて、一緒に苦しみたかった。支えになりたかった。

そばにいてあげたかった。





こんなこと、考えたって
今更何も変わらないのに。




「………ちっ」


ひどく苛立ったように舌打ちをして───ローさんは、刀を鞘に納めた。



「医者の前で生きたくないなんて言うんじゃねェ。死ぬなら勝手に死ね」

「……医者っていってもローさんは死の外科医でしょう」

「医者は医者だ、解んねぇならいい。おれの手を煩わせるんじゃねェ海にでも飛び込んでろ」


………言うだけ言ってさっさとどこかへ行ってしまった。どこかで荒々しくドアを閉める音が響いて、ちらりと追いかければよかったのかもしれないと考えた。



それにしても。


「───殺してやるって言ったのは自分じゃない」


なんであの人があんなにも怒っていたのか解らなくて、1人で首をかしげる。


変な人だ。
変な人。




「………」


膝を抱えなおして、目を閉じた。




いつでも、勝手にしんでもいいのならもう少しだけ待ってみよう。あの人ともう一度、話をしてみよう。






もう少しだけ。
頑張ってみよう。







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