皆が願った幻想
□お願いだから
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「ねぇバッツ、さすがにそろそろキツいんだけど」
「ああ、俺も!」
そんな元気よく笑ってどうする。そう思ったけれど黙っておいた。
「斬っても斬っても……さすがね、ちょっとなめてたわ」
「まぁ、ただで通してくれるわけないよな」
「………そうね」
答えてる最中にも、仲間の姿をした命を持たない人形が飛び掛かってきた。
なるべく見ないように斬り捨てる。やっぱりあまりいい気分じゃない。
「あーっひっでぇ!今の俺じゃなかったか!?」
「え?あぁ、そうだったかも」
「容赦ねぇなぁ!」
「できるわけないでしょ」
ほんとにもう。
緊張感がないというかなんというか、今の状況解ってんのかなこの人は。
「……なぁ」
「ん」
「いいよ、ちょっと休んでて」
「は!?」
───いやほんとに解ってんのかこの人は!
「休むって!そんなことできるわけ……」
「いいから!」
語調の強さの割には優しく、バッツの後ろに引っ張りこまれた。
直後に鉄同士がぶつかる耳障りな音がすぐ近くで響く。
「……ちょっと」
まだ戦える。
戦わないといけないのに。
「いいからさ。俺だってちゃんと解ってるよ」
バッツの剣が、少年の形をしたそれを貫いた。無意識に目を背けてしまう。
仕方ないじゃない。
だって。
声も。体も。戦い方も。
一緒なのよ。
「………手、震えてる」
「……っ、」
そう言われて体の力が急に抜けた。なぜだろう、泣きたくて泣きたくて仕方がない。
本当は解ってる。
目を反らせながら戦う事の危なさも、形だけでもそれらを切り捨てたくなかったことも。
バッツがそれに気付いてることも。
「ごめんな、俺のせいで無理させて」
「……付き合うって言ったのは私よ」
「ああ、嬉しかったよ!」
だからさ。な、頼むよ。
「…………」
ばか、バッツのくせに。
「……バッツ!!」
背を向けているバッツに、後ろから抱きかかえるようにして剣を持たせた。
守られているようだと気付いて、悔しさがあふれだしてくる。せめて泣かないようにと力を込めた。
「使って。私の剣も技も、全部かすわ。………ちょっとでも怪我したら怒るからね」
お願い。ごめん。ごめんね。バッツだって辛いのに。
───ちゃんと戦えるようになるから。
「はは、すっげぇ頼りになる!」
バッツは笑いながら剣を受け取って、再び宙から現れたそれらにぴたりと構えた。
「────さぁ、来いよ。」
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