皆が願った幻想
□崩壊の序曲
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「出会い方を、間違えたのよ。私たち」
彼女は手を広げて、悲しそうに笑った。
「私ね、コスモスもカオスも、どうでもいいの。もういやなの」
──彼女には、この前までの戦いの記憶があるのかもしれない。
何故そんなに悲しい目をするのか理解できなくて、傍によることも気が引けた。
この人に手を払いのけられたら、と思うと恐ろしかった。
「どうしてあなたはそっちにいるの」
「………」
「……私はどうしてこっちにいるんだろう」
彼女は頭を抱えて、小さくうずくまる。俺は立ちすくむばかりで何もできなかった。
───そうか。
出会い方を間違えたのか。
俺たちは。
「────ごめん」
戦いの記憶なんて、俺にはない。でも。
「それでも俺は、好きだ」
好きなんだ。
もう一度そう言うと、彼女は首を振った。
「何も変わらないわ」
「……、」
「あなた、この前もそう言った。私たちの末路は変わらないの、ずっとずっとずっと、ずっと昔から」
「………それでも」
それでも俺は。
何も変わらなくたって、俺は──
「もうね、疲れちゃった」
彼女が、すらりとした長剣を引き抜く。俺はその光景を知っている気がした。
───俺は知っている?
「やっぱり、何も変わらなかった。ずっとおんなじなの。
私とあなたはどうしてか互いに違う方を行ったり来たり」
知っている。いけない。
何かとても嫌な予感がする。
ちがう。予感じゃない。
――――俺は知っている。
「……………待っ、」
「…次は、一緒だといいね」
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