皆が願った幻想

□発展途上の恋
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「……風邪引いたって、」

フリオニールが?


「そーそー。けっこう高いみたいでさぁ」

「大丈夫なの?」

「いや全然!
朝ふつうに学校行こうとしたから慌てて止めたんだよ俺」


何故か楽しそうに笑うバッツは置いといて、なんというか、そういうのはすごくフリオニールらしい。


「………なんで急に…」

だって昨日会った時は元気だったし、しんどそうな様子はなかった。家に帰った後で発熱したんだろうか。

「んー…まぁ季節の変わり目だしなぁ。あいつもけっこう無理するとこあるし」


そうね、と返したらバッツは困ったように笑った。私も困った。……心配だ。


そうだお見舞いのメールを送ろう、と携帯を開いて、フリオニールのアドレスを知らなかったことに気付いた。


――そっか。
よく話はするけどなんとなく聞きにくくてアドレス交換してなかったんだ。

「どした?」

「……うん」

……まぁ、アドレスなら目の前のこいつが知ってるでしょう。


「……フリオニールにお大事にって伝えて」

「あ、じゃあ一緒にお見舞い行くか」

「………はっ?」

「お見舞い!もしかして放課後用事あるのか?」

「や、今日はないけど……」

「じゃ決定な!リアが来たらあいつも喜ぶよ。部屋に女の子来たことないしな!よかったよかった!」

「ちょっと!!」

そうか彼女いないのか!
なんて思ったのはひとまず置いといて、何勝手に話しすすめてんのこいつは!なにがよかっただ!


「バッツ!私は……」

「え?行かないのか?
もうフリオに行くってメールしちゃったけど」

「!!!!!?」

黙って成り行きを聞いていたスコールが、私の代わりにため息をついてくれた。


「……ば、だ、だってやだちょっと待って!!私メルアドも知らないのに」

「それじゃフリオにリアのメルアド送っとくな!」

「きゃあああ!!」

そういうのは自分で頑張りたかったのよばか!!!

「まぁまぁ、もう送っちゃったし!あっはっは」

「あっはっはじゃないわよばか!ばかっ!!」


頭がぐらぐらしてきた。
私もうどうしたらいいのか。


「……行くつもりが無いなら、俺からそう伝えるが」

「えっ」


声に振り向くとスコールも隣で携帯を取り出して、メール画面を立ち上げていた。
いつの間に。


「どうする?」

「ど、どうするって…」

「なんだよ行こうぜリア!ジタンはバイトだしスコールはデートだし、ティーダは部活だし1人じゃ寂しいだろ!」

「でも〜……」


うだうだしていたら、スコールが文面を打ち出した。



さっき、の、
見舞いの、話は、
なし、だ?


私に見せ付けるようにゆっくりゆっくり打った気がするのは気のせいかな。


「ま、待って!まだ行かないって決めたわけじゃ」

「それじゃあ行くのか」

「えーと……」


だってお見舞いって。

そりゃあ行きたいとは思うけど、すごく仲が良いわけでもないのにいきなり行って引かれないかな。
いやフリオニールはそんな人じゃないとは思うけど、でも………

「送るぞ」

「わあっ!待って待って!」

だめだ。なんか考えすぎてわけわかんなくなってきちゃった。



「いっ、行くわよ!行けばいいんでしょっ!!」

「そうか」

間髪いれずにあっさりと携帯を閉じるスコール。ちなみにバッツはにやにや笑っている。


「こうでもしないと進展しないからなぁ」

「………は?」

「んじゃ、放課後な!
迎えにくるから逃げんなよー!」

「あ、ちょっとバッツ…!!」



ひらひら手を振って教室を出ていったバッツを追いかける訳にもいかず見送ってから、
座ったままのスコールの方へゆっくりと振り向いた。




「…よかったな」

「……謀ったわね」

「朝礼が始まる。もう席に着け」

「…………!!」




―――どうやら腹を括るしかなさそうだ。



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