重なり合った世界
□最後の1人
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広い広いコンデヤ・パタ山道の奥の奥、山道越えてそのまた奥に。
静かに佇むマダイン・サリ。
かつて召喚士が生きた村。
「おじいさんが言っていたのよ。エーコはまだ、ここから出てはいけないの」
何故なのかは知らない。
ただ、大好きなおじいさんが、自分を守るためにそう言ったのだということは分かっている。
「あと……何年待てばいいかしら」
エーコは6歳だから、あと10年。
たったそれだけ待てばいい。
うん、わかってる。エーコはちゃんとわかってるわ。だって約束したのだもの。
「ねぇモグ、それにチモモにモチャ、モーネル。
山道を抜けて街へ降りれば、人はたくさんかしら。エーコみたいな子がたくさんいるのかしら」
────いいかい、エーコ。
「でも───おじいさんは、エーコは1人だって言ったわね」
───エーコは最後の1人だ。
いいかい、エーコ。決して悲観してはいけないよ。召喚士一族の娘として誇り高く生きるんだ――
「ほこりたかくいきるのは、どうすればいいのかしら?」
おじいさん。
大好きなおじいさん。
あんなに物知りだったのに、エーコにもう何も教えてくれないの。
「でもね、ちゃんとわかってるわ。
街の子達には角なんてないの。みんなを喚ぶこともできないの。なんの力も持ってない、ふつうの子なの。
エーコは、………エーコは」
エーコは、ひとりぼっちなんだわ。
モグが、みんなが傍にいてくれてるのにエーコは1人なんだわ。だって「最後の1人」なんだもの。
街に降りれば、街に降りたって。
エーコはずっと1人のままなんだわ。
「おじいさん……」
なんでも教えてくれたやさしいおじいさんは、もういない。
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