平和を願った花
□くやしい。
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「くやしい。」
「……?」
やはりこの娘は唐突だ。
いつもいつも前置きもなく、思ったことを口にする。
「くやしいったらくやしい。すっごいくやしい」
「……どうした」
………他にどんな言葉がかけられようか。
ルーチェは本当に悔しそうに、頭を抱えて考え込んでいる。
「何をどうやったらああなるんだろ、おかしい。食べてる物はだいたい一緒なのに」
……尚も一人悔しがる様を見て、1人でに溜め息が口をついて出た。
「…ルーチェ」
細い腕を引っ張り、ルーチェの意識をこちらに向かせる。
「一体どうした?ユフィと何かあったのか」
「……ちがうよ」
普段ならこの辺りで視線を空にさまよわせ、言い訳を始める所だが──どうやら、今日ばかりは違うらしい。
「それで?」
「……えっと」
続きを促すとルーチェは何故か顔を少し赤らめ、それからまた例の悔しそうな表情を浮かべた。
「……とにかくっ!ヴィンセントはズルいよ!」
「……」
……予想外だ。
「…何か言いたいことがあるのなら言えば良いだろう」
何一つ状況が理解できていないのに『ズルい』と言われても対処のしようがない。
そう告げるとそれじゃ言うけど、とルーチェは口を開いた。
「…ヴィンセントってば綺麗なんだもん」
「…………」
唐突だ。
唐突としか言いようがない。
「なによ〜っその顔!こいつ突然なんだようぜぇなとか思ってるんでしょ!ヴィンったらうぜぇ!」
突然の非難の嵐に気を取られている隙を狙われ、ルーチェに頬をつねられてしまった。一体この娘は何がしたいのか。
「…やにをひゃっている」
「あーあ良いなぁズルいなぁヴィンセントは。男なのに細いし綺麗だし美人だしくやしいな」
「ひょりあへずはやせ」
このままじゃ埒があかない。とりあえず手をはなすように促すと、
「…かわいい」
なんだと。
「……」
「そーやって眉寄せるのとかさー……普段クールな分こう…ギャップがさ。
何て言ってんのか解んなくてもかわいいって言うか……そんなのズルいよね。全体的にずるいと思う」
「……いい加減にしろ」