皆が願った幻想
□その一言
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「…おなかすいたわね」
「すいたなぁ」
すかさずさっきご飯食べたばっかだろ、とティーダが突っ込みを入れてきたが、リアがだるそうに返す。
「……食べたけどさっき体育だったでしょ。
ジェクト先生の授業は学生の体育の域を超えてるのよ」
「そうっスか?」
「……まあな…」
「はぁ……チョコボの子はチョコボね…」
フリオニールとリアにじと目で見られ、小首をかしげるティーダ。
「うーん……よく解んないけど、とりあえず俺バッツたちんとこ行ってくるっス」
「うん、もしよかったらお菓子もらってきて」
だらだらと机に寝そべりながら言うリアにティーダは笑って答えた。
「あはは、あんまり食べると太るっスよ〜」
「………」
ティーダの発言に、リアの顔が少しだけきつくなった。
フリオニールはすっと背筋が寒くなったが、ティーダはまったく気付いていない。
「じゃ!またあとでな!」
「あ、あぁ…」
悪気はない。解ってる。
たぶんリアも解ってるから何も言わないのだろう。
「……食べたぶんだけ動くし。別にいいもん」
それでも聞き流せなかったのか、リアはむくれて顔を窓の外に背けてしまった。
それを見てあまりの可愛らしさに笑いそうになったけれど、なにやら悪い方に勘違いされて怒られそうなので相槌を打つだけにしておいた。
「…2時過ぎ、か。
マックフルーリーが200円になるわね」
「え?…あぁ、そうだな」
時計を見ると、確かにそんな時間だ。
のんびりだらだらと過ごしているせいで時間の流れの実感がうとくなっている。
「…んー、でも昨日食べたばっかりだしなぁ…でもおなか空いたしなぁ…」
相変わらず机に寝そべってぽつぽつ呟くリア。
フリオニールも肘をたてて、同じくぽつぽつと返した。
「…いいんじゃないか?別に」
「よくないわよ。ばか」
「さっきは食べた分だけ動けばいいって言ってたじゃないか」
「それとこれは話が別」
「……そうか?」
「そうよ」
何が違うのかいまいち解らないけれど、そうだと言うのだからそうなんだろう。
「…ジタンがマックでバイトしてるのが、問題なのよね」
「え?」
「だって学校帰りとか出かけた帰りとか、何かと寄りたくなっちゃうでしょ。
100円マックだったらいいかなってシェイクとか色々食べちゃうの」
「…あぁ」
そう言われてみると確かに思い当たる節がある。バッツやスコールと出かけるとついついジタンのいるマックへ足が向くし、ただで居座るわけにもいかないから何かを注文をする。
それが度重なると確かに、金銭的にもまずいかもしれない。
「……そういえばジタン、彼女さんと喧嘩しちゃったんですってね」
「喧嘩!?」
「あぁ喧嘩っていっても、いつもの」
「……。」
いつもの。
いつもの痴話喧嘩。
ジタンは可愛い女の子とあらば声をかけずにはいられないようで、どんどん女の子と会う約束をしたり遊ぶ計画を立てたりしている。
そのほとんどが口約束のまま終わっているのは、やっぱりジタンが本当に好きなのはただ1人だということをあらわしてる、らしい、が。
(俺にはちょっとできないな……)
確かに女の子と一緒に遊べるのは楽しいかもしれないけれど、(というかかなり羨ましいけれど)、なんだかんだで一緒にいたいと思うのはリアだけだ。