スフィアから見た夢
□犬と猫
1ページ/6ページ
「おいブラスカ!ちょっとアレ、見てみろよ」
「ん?……おやおや」
ジェクトとブラスカが見つめる先には、一組の男女。
男の方は腕を組み、むっつりと黙り込んでいる。──ちなみに表情はかなり険しい。
対して女の方は、すらりと伸びた手を腰に当て、素晴らしい程にっこりと微笑んでいた。
「これをこうして…っと」
ジェクトは映像スフィアに手を伸ばし、ためらいなくスイッチを押す。
ぶぉん、と控え目な電子音が響き、ブラスカはニヤニヤと笑ったジェクトを咎めるように目を向けた。
「…怒られるんじゃないかい?ジェクト」
「はん!バレなきゃいーのよ、バレなきゃ!」
「やれやれ…私は知らないからね…?」
「…どうしてなのか説明してくれる?黙られても困るんだけど」
「どうしてもこうしても無いだろう。水がお前にかかった。それだけだ」
毅然とした態度で呟く青年に、少女は、相変わらずの笑顔で続けた。
「だから、私が聞いてるのは、どうして水が私にかかったのかと云うことなんだけどなぁ?」
「…………手が滑った。
これで良いだろう?」
「……良くない。」
……その一言に、少女はついに笑顔を捨てた。
「どうして私がびしょ濡れにならなくちゃいけないのよ!」