皆が願った幻想
□モーニング・ウォー
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「…珍しいね。
リア、今日お休みかと思っちゃった」
「うん……ホントはもう少し早く来れるはずだったんだけどね」
バッツに邪魔されて。とはなんとなく言えない。
「でも…良かったね。
セフィロス先生とマティウス先生に捕まったら、ちょっとしつこいもんね」
困ったように笑うティナ。
この学園一の美少女と呼ばれるだけあって、やっぱりすごく可愛い。
「そうなんだよね…。なんか朝から疲れちゃった」
言いながら、リアは自分の席に着く。直後に本鈴のチャイムが鳴った。
「あーもう、ホントにギリギリ」
「遅かったな。
何かあったのか?」
前の席のフリオニールがこっちに振り向いた。
どことなく心配そうな顔をしている。
「…何かあったわけじゃない、けど!」
そんなフリオニールを、じろりと睨み付けた。
「……あえて言うならあのおバカのせいね。
あいつが朝っぱらから余計なことかましてこなければこんな事にはならなかったわよ」
「あ、あいつ?
……あぁ、ノアか」
睨み付けられた側のフリオニールは、一瞬たじろいでしまった。
いままでの付き合いからただの八つ当たりだとは解っているけれど、なかなか慣れない。
「そうよ、あいつよ!あいつ、私が朝食食べてる間に私のお弁当を──」
そこまで言って、リアは自分が大きな声を出してクラス中の注目を集めていることに気付いた。
「…今日は学食で食べる。」
恥ずかしそうに呟いたリアを見て、フリオニールはふと思いつく。
「(…ノアはリアの弁当に何をしたんだろう…)」
ノアのやることだ、どうせ普通の事じゃないに決まってる。
「リア!今日学食ッスかー!じゃみんなで一緒に食べようぜ!」
「…一緒に?」
ティーダに元気よく誘われて、リアは少し考えた…けども。
「……やめとく。」
「えー!なんでッスか!!」
「だって、みんなってジタンとバッツでしょ?」
この3人組は危険極まりない。周りの目をあまりにも気にしなさすぎる。
…カレーライスがくるくると宙に飛んだときの衝撃は、きっと一生忘れない。
「今日はスコールも一緒っスよ!なースコール!」
「………。」
がしっ!とスコールの肩を奪って、強制的に肩を組んだティーダ。
あぁその顔は心の中で文句を言っている顔だわ。眉間にシワが寄りまくってる。
ティーダが気付かないのが不思議だ。
「………でもティーダ、お父さんがお弁当作ってくれたんじゃないの?」
そんなスコールにティナがそっと助け船を出した。
この辺の細かい気遣いができる辺り、やっぱりティナは学園一だ。
「いーんだって!どうせ弁当の中身は──‥」
そこまで言ってティーダが黙り込む。
「……ティーダ…。」
…みんな知っている。
ジェクトがお弁当に込めた愛の深さを。
「……もう嫌ッスよ…。
なんで毎朝あんな手の凝りまくったもん……今日なんかおむすび全部ブリッツボールっス…!」
スコールを解放したのは良いけれど、今度はティーダがイスの上で膝を抱えてしまった。
そんなティーダを見てリアは眉根を寄せる。
………わかる。
わかるわよ、身内からの愛が重たいっていうその気持ち。
「良いよな、スコールんちのオヤジさん……ふつうに優しそうでさ…」
「あぁ、確かに…」
フリオニールも同意したが、スコールの険しい表情を見て慌てて言い直した。
「まっ、まぁ、ほら!実際家族じゃないと解らないことだって多いしな!ティーダだってそうだろ?」
……こういう気遣いができるのにフリオニールはどうしてモテないんだろう。
…まぁモテられたって困るから別に良いんだけど、不思議だ。