海に恋した少年
□許せない言葉と行動
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「うるさい殺すつもりでやってんだよ!はなせ!!」
はなせ、と言い切る前に。
「いい加減にしろクソガキ!」
───怒声と共に、思い切りひっぱたかれた。
私は男の上から崩れ落ちて、地面に尻もちをつく。
「………」
痛みとかそういうものの前に、ただひたすら驚いた。
……マルコさんに。ひっぱたかれたのか、私は。
ぽかんとマルコさんを見つめていると、その人ははき捨てるように言った。
「やっちゃいけねェ事との区別もつかねぇか」
「は」
「お前は能力者だろうが」
能力者。
海に嫌われるリスクと引き換えに、良くも悪くも普通にはないものを手に入れた人間。
その能力のほとんどは、普通の人間を簡単に壊す事ができるものだ。
そんな事は言われなくても解ってる。
それを何故今言われなきゃいけないんだ、とひっぱたかれた頬を押さえながらマルコさんを見上げると、冷たく突き放された。
……視線だけでそれを感じた。
「ここは船の上じゃねぇ。考えろ」
───つまり。
「海賊」相手に拳を振るうのと、「一般人」を相手にそうするのと。
それはまったくもって違う次元の話だと、そう言う事なんだろうか。
「でもっ」
でも待って、こいつは。
「知った事か!」
言いきる前に怒鳴られて、今度こそ体がすくんでしまった。
「お前の事情を、この男が一から十まで全部知ってるって言うのかよい!何言われようが我慢しやがれ!!
解ってんのか!!今てめェはオヤジの顔に泥を塗ったんだぞ!!!」
叩かれた頬より、
殴った拳より。
すごい衝撃だった。
痛みだった。
「……次こういう事をしやがったら、おれがお前を船から降ろす。解ったな」
言われた言葉の一つ一つが呑み込めなくて、なんで、と呟いた。
見捨てられたような気さえする。だってあいつはオヤジさんを。なんで。解んない。どうして。
我慢しきれずにくしゃりと顔をゆがめると、マルコさんはとうとう私から目を反らせてしまった。それだけの事がものすごく響く。
「……考えろ。
解んねェなら、お前はそこまでの奴だってことだ」
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