海に恋した少年

□船長のお気に入り
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「お前おれを本気で怒らせたいのか」

「すみません……」

「あ?なんて?」

「すみません」

「聞こえねぇ、下向いてんじゃねぇよ」

「ごめんなさい!」

「でけぇ声出しゃあいいと思ってんのか?」

「ご、ごめんなさい………」

「声がちいせぇんだよ極端な野郎だな」



2人の視線の先には、平謝りを続ける主人公に
腕を組んで主人公を見下ろす我らがキャプテン。



「おいペンギン、何やらかしたんだよ…あいつ……」

あまりの威圧感に見てるこっちまで目をそらせたくなる。
よっぽどの事をやらかしたに違いないとペンギンを見たが、こっちは相変わらず飄々としたままだ。


「いつもと変わんねぇよ。
……まぁ見ろ、あの船長の顔」

「……………。
……うわ〜楽しそ〜……超きらきらしてる〜…」


口元は歪んでいるし、その瞳は危険に光っている。


……なんて凶悪な笑顔だ。




「……あいつ素直に謝るからな。反応が楽しいんだろうよ、おれなら絶対に謝らない」

「あぁ、お前そういう奴だよな…」

「……お前はあいつと同じタイプだよな。だからからかわれるんだよ」

「は?」

何を言われているのかぴんと来ず、キャスケットは首を傾げる。

「ほら、お前と主人公は船長の言うこと成すこと真に受けて面白い反応返すだろ?」

「………」

「ベポはあんなだし、ジャンバールは素直すぎて船長が逆に戸惑うんだよ。
他の奴らも船長のアレさにそこそこ慣れてきたからな。
おれはあの人のこと尊敬はしてるが遊びに付き合うつもりはないし」

「………はぁ」

「……だからな、お前らは船長にとって本当にいい部下だと思うぞ?」


……要するにおまえが言いたいのは、おれらは船長の「いいおもちゃ」ってことだろ。

キャスケットは唇を尖らせる。


「お前も相当性格悪ぃよなぁ」

「なんだ、今更」


鼻で笑って軽く流したペンギンをじと目で見上げていると、大きな声が響いてきた。主人公だ。


「あ〜あ、あの時のことおっきい声で言っちゃおうかなぁ!」



「──お、見ろよペンギン。あいつとうとう反撃に出たぞ」

「…無駄に決まってんだろ」





「言えばいいだろ」

「えっ」

「別にいいぜ?言っても。
────その代わり、秘密を握ってるのはおれの方だってことを忘れんなよ」

「………やっ…その……」

「……覚えてるだろ?三日前の」

「いやぁあああああ!!!!きゃぁあああああごめんなさい!!!!」






「ほら見ろ」

「うわぁ………」


あまりにも想像通りのそれに、キャスケットは主人公を心底哀れまずにはいられなかった。



「……傍から見りゃあお前もあんなもんだぞ?キャスケット」

「…………うわぁ……」




あんまりだ、そんなの。








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