海に恋した少年
□ただそれだけが伝えたくて
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驚いて振り返ると、マルコとサッチがいた。2人ともにやにや笑っている。
「…………。」
顔が熱い。
………別に照れてたわけでも腹が立ったわけでもない。ほんの少し恥ずかしかっただけだ。
それをこいつらにまで見られるなんて。
「ふてくされんなよ〜!可愛いなぁこいつめ」
「うわ!!」
無意識に2人から顔をそむけると、サッチの野郎にこづかれた。思いの外力が強くておれは前のめりになる。
「なんだよ!お前まで!」
「んん?おれは年上だぞ?」
「……!!」
…聞いてたのかよ。
ちくしょう反論できない。
「2人ともいつから聞いてたの〜?趣味悪いなぁ」
「まぁそう言うなよい。
………お疲れさん、任務終了だ」
「……それじゃあ!」
「ああ、こっちは準備出来てる」
マルコが言った瞬間そいつの顔がぱぁと華やぐ。それから突然、状況が読み込めてないおれの手を引っぱりだした。
「行こうエース!」
「なんだよ、どこへ」
「甲板!お誕生日パーティーやるんだよ!エースの!!」
「は」
「………あーあー。今言っちまったらサプライズになんねェだろい」
「まぁいいじゃねぇか、エースの豆鉄砲くらったみてぇな顔は見物だったぞ?」
後ろからそんな声が聞こえてからようやく我に返り、引かれた腕を少し引っ張り返してみた。
「おいおまえ、待てって!なんで……」
「なんでって!」
───生まれてきた日は、特別なものじゃない!
「………!」
「だから遅れてでもお祝いしようよエース!
みんなが準備してる間エースを引き止めとくの、けっこう大変だったんだからね!」
そいつはおれの前を走りながら、笑ってそう言った。
「エース!生まれてきてくれてありがとう!!!」
─────ばかか。
「おれ」に、そんなまっすぐ言ってくる奴なんて今までいなかった。
おれの父親が誰で、おれがどんな存在なのか、知らないから言えるんだ。
知らないくせに。
何も知らないくせに、まるで知ってるみたいにおれのほしかった言葉を次々投げてくる。
ちくしょう。
おまえは、おまえらは
なんでこんなにもおれの心を掴んで、揺さぶるんだ。
「…!!!………!!!!
……………馬鹿野郎がっ!!」
「あはは!泣き虫!」
「うるせぇ泣いてねェよ!!!」
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