海に恋した少年
□ただそれだけが伝えたくて
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「ちょっとエース!!エースの誕生日1月だったんだって!?」
……ものすごい剣幕で詰め寄ってきたから、何だと思ったら。
「……それがなんだよ?」
「ばかっなんで言ってくんなかったの!?祝えなかったじゃない!!」
「同じことマルコとかサッチとかにも言われたよ。………であってるよな?名前」
ここに来てまだ日が浅く、顔と名前がなんとなくしか一致しない。間違えていないとは思うが。
「……あってるよ。
ていうか、みんなそう言うに決まってるでしょ!海賊が祝い事抜かしてどうすんの」
「ハハ、口実つけて酒のみたいだけだろ?」
「そうよ。宴ってそういうもんじゃないの」
「…………」
「ためいきつくなよ!」
「いいんだよ」
「よくない!」
───いいんだよ。
しつこく聞かれたからあいつらに誕生日を教えた。きっと来年から盛大に祝ってくれるんだろう。
鬼の血を引くおれを、
……おれが、生まれた日を祝おうなんて。
おれの父親が誰なのか知っていたらとんでもない事だ。
おれは生まれてきてはいけなかった子だから。ちゃんと解ってる。
────でも、おふくろはおれを生んでくれた。あいつの事もおれの事も、愛してくれていた。
……この船の奴らは、おれを疎ましくなんて思っていないと知ったから。
真実を知って尚「息子」と呼んでくれた人がいるから。
家族になろうと言ってくれた奴がいるから。
「………うっせェなあ、いいんだよ。ほっとけ」
「なーによ、かわいくないんだからぁ」
「男が可愛くてどうすんだよ」
「えー?うちにもいるよかわいい男の子!ハルタさんって言うんだけどね」
「……男の子、って。
お前より年上だろ」
「そうだけどかわいいから」
「………変な奴」
……変な奴ばっかりだ。
ここ。
呆れながらそう言うと、心底おかしそうにそいつが言った。
「そうだよ。変なのばっかり。気が楽でしょ」
「…………、」
まぎれこむ。
まぎれこんで解らなくなる。そういう感覚に近かった。
誰の血をひいてるとか関係なく、おれはただの個人でしかない。
ただの、ポートガス・D・エースという1人の人間でしか。
「…………そうだな…」
そうだな。何でかは解らねェけど、ずいぶん
楽だ。
……もしかしたらそれが「安心する」って事なのかもしれない。
「そうやって笑ってたほうがエースもかわいいよ」
「バッ……!!てめェ!おれはお前より年上だぞ!!」
「知ってるよ、17歳だってね」
「取り消せ!んなの男にとって侮辱でしかねェ!!」
「やだもう照れちゃって」
「てめ……」
照れてんじゃねェよあほかおまえは。
色んな感情が爆発しそうになった時、後ろから呑気な声が割りこんできた。
「はいはい、そこまでな」
「炎出してんじゃねぇよい、エース。船燃やす気か」