海に恋した少年
□未来の話
1ページ/2ページ
「ねぇエース。あなたの話す未来には、いつだってあなたがいないんだね」
勝手に隣に座りこんできた奴が、笑いながらそう言った。
「どうしてそんな悲しいことを言うの?」
「……うるせぇ。何も知らないくせに勝手に首突っ込んでくるんじゃねぇよ」
「知らないから首突っ込むんでしょ、エースのこともっと知りたいもん。家族じゃない」
「んなのおまえらが勝手に言ってるだけだ」
「そ?残念だなー」
………おれは何度もそう言ってるんだから、いい加減に船から降ろすなり海に落とすなりすればいいのに。
……正確には毎日のように落とされてはいるが。
「……あのさあ。そんなことばかり続けてたら、いつか本当に死んじゃうよ。
こっちも諦める気ないんだからそろそろ素直になれば?」
「おまえには関係ないだろ。死ぬ時は勝手に死ぬ。ほっとけ」
「あーだめだね、簡単に死ぬとか言っちゃ!私エースのこと好きなんだから悲しいじゃん」
「………笑ってんじゃねぇよ」
好きだのなんだの。
何も知らないくせに。
「…………。」
「何よー、ほんと無愛想!オヤジさんに勝てないことがそんなにいや?」
「うるせぇ」
「はいはい。申し訳ありませんでした」
「…………弟」
「ん?」
「………弟にも、同じこと……言われた」
この能天気な笑顔が、なんとなくあいつと似ていて。
───だからふと思い出した。
「へぇ…弟いたんだ。
あはは、もっと楽しそうに笑えって?」
「違う……」
゙このばかやろうがァ!!゙
「……?
それじゃ、なに?」
゙おれはエースが大好きなんだ!!死ぬとか簡単に言うなぁ!!!゙
「ほんと………
ばかだよ、おまえらは…」
……いつだっておれは、存在を否定されて生きてきたのに。うまれてきてはいけないこだったのに。
──そんなおれに仲間になれだの、好きだのって。
「何も知らねぇくせにさ。
…………はは…ほんとにばかだよ、あいつもおまえも…………白ひげも」
「泣き虫」
「……ッ!!うるせぇ!!!」
──たったそれだけの言葉なのに、どうしてこんなに…
うれしいんだよ、ちくしょう。いちいち揺さぶられて馬鹿みたいだ。
「─────あ……」
そこまで考えて、ふと思い出した。
゙………嬉しいんだなァ…
ただの言葉でも嬉しィんだ゙
「あいつも………
そうだったのかな……」
「ん?なに?」
「………うわっ顔近…
なんでもねェよ!!!」
思いの外近かった距離に驚いて振り払う仕草をすると、そいつが耐えかねたかのようにふきだした。
「あははエースはほんっとおもしろいなぁ!!もー何ひっかかってんのか知らないけどさ、早いとこ仲間になればいいのに!」
「………!!!
……うるせぇって言ってんだろ!」
万更でもないくせに素直じゃないなぁ。
―――屈託のない笑顔と一緒に呟かれたそんな言葉は、そっぽを向いて聞こえなかった事にした。
NEXT→あとがき