海に恋した少年

□未来の話
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「ねぇエース。あなたの話す未来には、いつだってあなたがいないんだね」




勝手に隣に座りこんできた奴が、笑いながらそう言った。

「どうしてそんな悲しいことを言うの?」

「……うるせぇ。何も知らないくせに勝手に首突っ込んでくるんじゃねぇよ」

「知らないから首突っ込むんでしょ、エースのこともっと知りたいもん。家族じゃない」

「んなのおまえらが勝手に言ってるだけだ」

「そ?残念だなー」


………おれは何度もそう言ってるんだから、いい加減に船から降ろすなり海に落とすなりすればいいのに。

……正確には毎日のように落とされてはいるが。



「……あのさあ。そんなことばかり続けてたら、いつか本当に死んじゃうよ。
こっちも諦める気ないんだからそろそろ素直になれば?」

「おまえには関係ないだろ。死ぬ時は勝手に死ぬ。ほっとけ」

「あーだめだね、簡単に死ぬとか言っちゃ!私エースのこと好きなんだから悲しいじゃん」


「………笑ってんじゃねぇよ」


好きだのなんだの。
何も知らないくせに。




「…………。」

「何よー、ほんと無愛想!オヤジさんに勝てないことがそんなにいや?」

「うるせぇ」

「はいはい。申し訳ありませんでした」







「…………弟」

「ん?」

「………弟にも、同じこと……言われた」


この能天気な笑顔が、なんとなくあいつと似ていて。
───だからふと思い出した。


「へぇ…弟いたんだ。
あはは、もっと楽しそうに笑えって?」

「違う……」




゙このばかやろうがァ!!゙




「……?
それじゃ、なに?」



゙おれはエースが大好きなんだ!!死ぬとか簡単に言うなぁ!!!゙




「ほんと………
ばかだよ、おまえらは…」



……いつだっておれは、存在を否定されて生きてきたのに。うまれてきてはいけないこだったのに。



──そんなおれに仲間になれだの、好きだのって。



「何も知らねぇくせにさ。
…………はは…ほんとにばかだよ、あいつもおまえも…………白ひげも」





「泣き虫」

「……ッ!!うるせぇ!!!」

──たったそれだけの言葉なのに、どうしてこんなに…


うれしいんだよ、ちくしょう。いちいち揺さぶられて馬鹿みたいだ。



「─────あ……」



そこまで考えて、ふと思い出した。




゙………嬉しいんだなァ…
ただの言葉でも嬉しィんだ゙







「あいつも………
そうだったのかな……」

「ん?なに?」

「………うわっ顔近…
なんでもねェよ!!!」

思いの外近かった距離に驚いて振り払う仕草をすると、そいつが耐えかねたかのようにふきだした。


「あははエースはほんっとおもしろいなぁ!!もー何ひっかかってんのか知らないけどさ、早いとこ仲間になればいいのに!」

「………!!!
……うるせぇって言ってんだろ!」




万更でもないくせに素直じゃないなぁ。


―――屈託のない笑顔と一緒に呟かれたそんな言葉は、そっぽを向いて聞こえなかった事にした。







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