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□吸血鬼パロ
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「腹減った」

「あそ」

「血ぃ吸わせろ」

「やだ」

「なんで」

「痛いから」




榛名元希という男は吸血鬼だった。

とりあえず…信じらんないよな、いや今は信じたけどな一応。
いや信じらんない部分もいっぱいあるけどな。

だってさ…。


『太陽?あ〜、俺そこまで吸血鬼の血が濃いわけじゃねえからほとんどヘーキ。夏とかは帽子被ったりしてりゃあいいし』

『ニンニク?十字架?準太古いな〜。んなモンで死んだり苦しんだりするわけねーじゃん。聖水だって、ありゃただの水だろ』

『血はレバー食ったりだな。でもやっぱり血ぃ飲みてー時はあっからさ、そん時は…うん』


なんだよ、うんって。
大方、動物とかの血吸ってたんだろうな。

んでたまに人の血?秋丸とか?うわあ…。



太陽浴びたら死ぬわけじゃないけど少し苦手で、血はやっぱり吸わなかったら辛いみたいで、ニンニクとか十字架喰らわしたら苦しむわけでもないけど…。



これは信じる得ないんだよなあ…。



「…榛名…牙出すくらい腹減ってんの?」

「るせえ。俺は準太の血が飲みてーの、イゾンしてんだから」


とりあえず牙をしまえ、怖いしいつ噛まれるか分かんねーし…。




榛名の話によると。

吸血鬼は気に入った、好み、美味いなどと…そんな人間の血を一度吸ったらもう、その人間の血しか飲みたくないらしい。
榛名はイゾン(依存?)って呼んでいるけど。



んで、榛名のその対象人物は俺らしい。


「マジ吸わせろ。死ぬ」

「じゃあ死んでみろ」

「てめえ…」

「榛名のやり方痛ぇんだって、ガッツキ過ぎ。しかも噛むとこいっつも首だし」

「一番いい場所なんだよ飲むには。それに準太いい匂いだし」

「汗臭いだけだ」

「いや全然、めっちゃ準太の匂い」

「何それ」


榛名はベッドに座る俺を押し倒し、噛みやすいようにか俺のTシャツの襟を左に引っ張る。

今日は左か…。


「この前右だったから、左な今日は」

「俺まだ『いいよ』って言ってねーぞ」

「『だめ』、とも言わないんだろ?」

「っ…つ」


野郎…噛むぞとかなんも言わないで首に噛みついてきやがった。



「ぁ…いたぃ…」

「すぐ済む」


そう囁かれ、耳元でジュウッと吸う音が響いて、一気に吸われる俺の血液。
体が跳ねる。

あ、あ、と漏れる言葉じゃない声。




変な気分。


手っ取り早い感情表現。


「っ…やっぱうめ…」

「もっ…苦しっ…!」

「もーちょい」


俺の肩を掴んでいた右手は後頭部に回され、左手は背中にと抱き締められて、またぐっと牙が入って来たのがわかる。

痛くて苦しくて、俺もしがみつくように榛名の背中に両腕をやりシャツを握り締める。


こいつ…ホント自分勝手だな…人の痛みなんか知らずに…。

つかどんだけ腹減ってたんだろ、勢いすご。



頭がクラクラしてきた頃にやっと榛名は牙を抜き、新しくできた噛み跡をズッと舐めてから首から離れる。

気分悪く、でもなんかヤられた後みたいな感覚でグルグルする意識の中、目があった榛名はキレーないい笑顔で一言言った。




「ごっつぉさん」



口の端についてた赤い水が、よく似合ってた。




END


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