短編

□二言
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一言



その一言が、オレを幸せにする。








『誕生日おめでとう、榛名』


「サンキュ、準太」




日が変わった5月24日。オレの20歳の誕生日だ。



準太と一緒に迎える事は出来なかった。
加えて、一緒に祝うこともできない。帰れない。


オレの誕生日なのに、きっと準太が悲しい思いをしてくれてる。

帰れるとオレも思ってた。けど、出来なくなった。
仕方がないと言えばそれまで。そういう『シゴト』をオレはしている。
こういうトコロが時によってキライだ。例を上げれば、準太の誕生日。



電話で一緒に迎えたからって、横にいるのといないとじゃあワケが違う。
顔が見たいのに。



『プレゼントは帰ってきたらな』


「あ、用意してくれてんの?別によかったのに」


『まー年収ハンパない額貰ってる奴にやるようなモンじゃないもんだけどな』


「その言い方なんだよ。準太が選んだもんなら絶対オレ気に入るだろうし」



皮肉じみたセリフだけど、照れ隠し…ではなく…悲しみ隠し?

準太は気を使ってくれる。優しい。言葉はアレだけど、準太なりのだ。


次帰れんのは、3日後だったかな?
一週間とかじゃなくてよかったー。一週間も過ぎた後に誕生日パーティーとか、冷めるし。

その時は、準太に美味いもんたくさん作ってもらって、夜はお約束で。


3日かあ…考えると遠いな。



「準太……会いてえわ」


『…バカ』



オレだって会いてえよ、と小さく言った準太の言葉が胸にじわっときた。



ああもう。

好きだなあ、準太のコト。




「…準太」


『ん?』


「言ってくれよ、一言」


『なにを?』




好き、ってよ。



その一言が、オレを幸せにするんだ。準太。











『…好きだ、元希』






違った。

二言だわ。



分かってんなー準太。





『だから、早く帰ってこい。バカ元希』





Happy birthday,Motoki!


END.

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