短編
□1010記念小説
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せっかく、久々に帰ってきたのに。
「え、双子?タカヤんちに泊まりに行ったよ」
大事な子どもは友達の家にお泊まり。
別に悪くはない。悪くないけど…よ。
帰る度に成長していく双子の娘と息子。もう6歳になるらしい。
オレの頭の中じゃあまだ3歳程度なのに。早いもんだ。
「あ〜なんか分かる。オレもさ、双子はいっつも利央の幼稚園に預けっぱなしだから。歩き出した瞬間とか見れなかったし」
「歩くどころか、オレなんて立つ時も見れなかったぞ」
「写真あるよー」
「ビデオに撮れよ」
「いつ立つのか分かんないのに、カメラ構えてられないから」
はははっと笑う準太。いつみてもキレイな笑顔だ。
疲れたオレはもう眠くて、寝室のベッドの上にいる。
準太は準太で、まだ少し仕事があると、ベッド横のパソコンに向かってコーヒーを飲んでる。
子どもの成長を全部見届けられていないのは準太も同じらしく。
夫婦そろって、と笑ってしまう。
それでも子どもってのは、親が見てても見てなくても成長するもので。
最近双子はキャッチボールを始めたらしい。しかも硬式。
あまり『おねだり』をしない2人から「野球のグローブと球が欲しい」と言われ、準太は一言「いいよ」と了承した。
まだ6歳なりかけなのに、少し危なく聞こえるが。
でも子どもらは楽しいらしく、幼稚園でもゴムボールを投げて遊んでるらしい。
ああ。子は親に似るって言うらしいけど、本当だったんだな。
まあオレの職業は知ってるし、小さいし興味は持つのかな。万国共通の野球様々だしな。
準太もやってたし……あ〜準太の投球懐かしいなあ。
投げてるだけなのに、あのエロさはなんだったんだろう。
腰がヤバかった。いや今もヤバいけど……。
「見てるとさ危ないなーって思うんだけど、普通に取っちゃうんだよな」
「えっ……ああ…」
「その笑顔が可愛くってさー。明日帰ってくるし、一緒にやったら?」
「そうだな…」
それを嬉しそうに話すお前が可愛いよって、喉まできたのを無理やり飲み込む。
つか前半聞いてなかった、ごめんな準太。
「…つかもう10時だし、寝たら?」
「準太は?」
「もう少しで終わる」
「じゃあ待ってる」
パソコンに向かいかけた準太にそう言うと、困ったように笑って振り向いて。
「嘘ごめん、まだ終わんない」
と言われた。
疲れてるオレを気遣って言ってくれた嘘は、嬉しい。
そんな準太が、オレは好きだ。
だから余計に。
「待ってるよ。1人で寝るの寂しいじゃん」
「……眠かったら寝ていいからな」
笑って言うと、部屋は薄暗かったけど、頬を薄く赤に染めてそう言った準太の顔はちゃんと見えた。
本当なら、準太とオレの間に双子って形で寝たかったけど。まあ明日もある。
でもそうなったら、準太とイチャイチャ出来ないから……。
うん。やっぱり起きてたい。
下心ありまくりだけど。いいじゃん、夫婦だし。
とりあえず、準太が終わるまで適当に起きてよう。
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