短編

□ナンパ
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「なに、なんで」



そう聞くと榛名は頭をかき、「知りたいから」とその一言。



「なんで。ナンパのつもりか?それとも情報収集の為?あいにく、お前に話すような事はないんだけど」



なぜオレはけんか腰なのだろう。
いやいいんだ。きっとこれ位がこいつにはいいんだ。


だってほら。
表情変えねーもんこいつ。ちょっと位キツくたって平気なんだって、こういう奴は。





「あー……ナンパだな」






聞かなきゃよかった。マジで後悔してる。ナンパだなって、なに?


眉間にシワがよる。でも顔つきは変えない。
ここで抜けた表情なんかしたら、会話がまだ続く。


とにかく、オレの脳内はこう騒ぐ。「早くこいつから離れろ」と。



「うん、ナンパか。まーとにかく、メアドとケー番」

「…携帯……ない」

「えっ、なに持ってないの?高校生なのに?」



持ってない高校生だっているだろう。
ちなみに持っていないのは嘘だ。エナメルの中に入ってる。


じゃあ、と榛名は小さな紙を出してきた。

警戒しながら手に取ると、それには榛名の名前とアドレス、携帯番号が書かれていた。

準備がいいことで。



「連絡して」

「断る」

「はっ?」

「今初めて話したやつに、なんで連絡しなきゃなんねーの」

「……」



目を丸くして、こっちを見てるこいつの顔には「なんで?」と書かれているように見えた。

なんでもなにも、それはそうだろう。


今初めて会って、初めて話して、名前確認されたらアドレス教えろとか。

お互いに知ってはいるけど。どんな奴かも分からない初対面の相手だぞ。

そんな相手に、いいよと一言いえる程オレは軽くない。

しかも……ナンパとか……。余計に困るわ。
マジに言ってんのか?オレの事口説きにきてんの?







「試合で、」
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